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起業家-魚料理店経営-

“さかな”で季節を感じる

水野 綾美(みずの あやみ)

" 鹿児島でもいっぱい美味しい魚が獲れるんです "

「魚料理だけなんだけど、予約が出来ずになかなか入れない、女性だけでやってる店があるんだよね」そんな評判の店の名前は『半魚人』。入るとカウンターが10席、奥に10名ほどが入れる座敷が一つ。テーブルには毎日書き換えられるメニュー。さらにL判にプリントされたいろんな種類の魚が名前とともに手作り風にディスプレイされている。

“さかな”で季節を感じる

“さかな”で季節を感じる

「子どもの頃は、“いさき”が食卓にのぼると『もうすぐ夏休みだなぁ~』と感じて、ワクワクしたのを覚えてます」。水野さんは、おじいさんが釣り師でいつも新鮮な魚を届けてくれて、さらにお母さんが調理師でそれを美味しく家族に味わわせてくれる家庭環境で育った。高校に入学する頃には、調理師になるんだと決めていたという。卒業後は迷わず調理師の専門学校へ進み、調理師免許を取得。その後鹿児島市内で、ホテルや料理店で勤務した後、東京でも働きながら調理だけでなく接客も学んで帰郷し、『半魚人』をオープンすることになる。「鹿児島でも美味しい魚がいっぱい獲れるのに、それを食べさせてくれるお店が少ないのが不思議でした。だからすぐに、自分のような女性同士でも気軽に入れるお店を持ちたいと思うようになりました」

「美味しいね!」「でしょ!」

ホテル時代には、自分の時間ができるとしょっちゅう市場に出入りしていたという。行動派の水野さんらしい。そこで知り合った水産会社の社長さんが、今の水野さんを支えてくれる一人だという。「お付き合いが10年以上になるんですかね。当時から私は自分の店を持つんだと言い切ってましたから(笑)。私の好みを理解して、いつもいい魚をとっておいてくださるんです。だから、その魚を使って私もお客さんの顔を思い浮かべながら、毎日メニューを考えるんです。市場から店までの帰り道自転車をこぎながら(笑)その時間がとっても好き」。カウンター越しに見渡せる調理場の中で、女性スタッフ2名がてきぱきと働いている。水野さんも笑顔とともに、その包丁さばきはまるでリズムを奏でるかのように軽やかだ。食材となる魚はもちろんのこと、『鹿児島の地物の魚を食べてもらいたい』その思いを共有できる人たちに支えられているという自信から、お客さんから褒められても、謙遜することなく『美味しいでしょ!』と言えるのだろう。

「美味しいね!」「でしょ!」

『半魚人』をあたためていきたい

食事を終えたお客さんの顔はみな笑顔。そんなお客さんを見ながら、お店の名前がどうして『半魚人』なのかを尋ねてみた。魚が好きで好きでたまらなくて。半分は魚みたいな私だから…。それと、お客さんにも覚えてもらいやすいでしょ」と笑いながら答える水野さん。すると今度は表情を変えて「多くの人に魚の種類を知って、食べてもらいたいんですよね」と。そういえば、店内で刺身をはじめとした料理が出される度に、魚の説明が念入りに行われていた。店がオープンしてまる3年、毎日この光景が繰り返されているのだろう。
「11月に一週間店を休ませてもらって、イタリアに行ってきます。地中海の魚を地元のヨーロッパの人たちがどんな風に調理して食べているのかを肌で感じたくて」。いつも予約でいっぱいで繁盛しているお店の経営者が、店を一週間休んで勉強しに行くなんてことはなかなか出来るものではないはずだ。鹿児島で獲れた魚を鹿児島の人に食べてもらいたいという水野さんの思いの強さとともに覚悟が感じられた。

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