" あの人に頼んで良かったと
言ってもらえる仕事がしたいです "
優しい笑顔が印象的な内田さん。しかし、話を聞いていくと、その優しさの中にも一本、筋が通っていることが分かる。司法書士になって8年目、その経験から一体どんな話が飛び出すのだろうか。
尊敬する兄の背中
学生時代から法律について学ぶことが楽しかったという内田さん。そのため「他の選択肢はなかったですね」ときっぱり言い切る。司法書士を目指したきっかけは5歳年上の兄にある。中学2年生の時、兄は医学部へ進学。専門的な道を進む兄を見て、自分も法律の専門家になろうと決意した。司法書士という仕事を目指したのは、地元の種子島に帰っても仕事ができると考えたため。大学の法学部を卒業した後は、予備校で資格試験の勉強に励んだ。精神的に追い込まれて10㎏も体重が減ったという。それでも夢を諦めず、合格出来たのは共に頑張る仲間がいたから。「1人じゃなかなか難しかったと思います」と内田さんは当時を振り返る。
丁寧な仕事を心掛けて
司法書士の主な仕事は、土地や建物の売り買いをしたい時や新しく会社を設立したい時に、登記に必要な書類の作成や手続きを代わりに行うことだ。間違えれば何百万単位の損害が生じることもある。その他にも、借金の返済で苦しむ人に対して、払いすぎた利子を取り戻したり、専門家の立場から返済の計画を立てたりする。どの仕事も責任が重く、緊張感がつきまとう。
内田さんは何よりも「丁寧な仕事」を心掛けているという。依頼者の話をよく聞いて、きちんとした説明を行うことはもちろん、言葉遣いやコミュニケーションの1つ1つも大切にする。例えば、自己破産した依頼者には家計表をつけてもらって、月の支出入を一緒に確認する。依頼者が二度と同じ過ちを繰り返さないようにアドバイスすることも仕事のうちだ。「この依頼者にはこんな事に気づいて欲しいという思いで、人それぞれ対応を変えていかないと司法書士が関わる意味はないんです」との言葉からは、仕事に対する真剣な姿勢が伺えた。
“身近な法律家”として
司法書士になりたての頃に受けた相談でこんなものがあった。「家族の生活費をまかなうために、色々なところから借金をして、どうして良いか分からないと相談に来られた親子がいました。ようやくその問題が解決したとき、お母様が泣いて喜んでくれたんです」その時、改めてこの仕事を選んで良かったと思ったそうだ。
司法書士は比較的身近な法律家だ。「弁護士さんは敷居が高くても、司法書士さんなら聞きやすいという方は多いですね(笑)」それでも内田さんは言う。「普通に暮らしていて司法書士に関わることなんて一度か二度あるだけです。その時だけの繋がりですが、あの人に頼んで良かったと言ってもらえる仕事をしたいです」
個人事業は「楽しい!」
司法書士をはじめとする国家資格を持っている人は個人で仕事を受けることが多い。「個人での仕事は時間の融通が利くので、好きな事に取り組めます。そこが良いところです」と内田さんは楽し気に話す。将来的にどうしたいかと問えば、「まずはもっと勉強して今の仕事の専門性を高めたい」とのこと。しかし、「ずっとこの仕事だけをしているか分からないですね。別の資格を取るのも良いですし、資格が必要ない仕事をするかもしれません」という好奇心の強さも垣間見せる。司法書士という夢を叶えた内田さん、次はどんな夢を叶えるのだろうか。ひとまずは、身近な法律家として今後も活躍していくことだろう。
取材 2012年9月 No.8 しごとびと