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客室乗務員

神社から、空へ。

田上 梨来(たのうえ りく)

"大空に描いた夢を追って
あきらめずに進んできた。"

「ソラシド エア」は、宮崎に本社を置くスカイネットアジア航空株式会社が運営するブランド名だ。「ソラシド(solaseed)」には「空から笑顔の種をまく」という意味が込められている。爽やかな白とグリーンのカラーと丸っこいロゴが印象的な飛行機は、九州各地と東京、沖縄の間を結んでいる。そのソラシドエアで、快適な空の旅をエスコートする客室乗務員、田上梨来さんに、夢を叶えるまでの道のりを尋ねてみた。

神社から、空へ。

田上さんの実家は、出水市の由緒ある神社。大勢の人が訪れる実家の手伝いを通して人と接する機会も多く、子どもの頃から人と接する仕事に就きたい気持ちがあった。「親に連れられて、よく飛行機に乗る機会もあったのでCA(客室乗務員)に憧れていましたが、なんとなく私には無理だろうと思っていました」。それでも、高校卒業後は人とふれあう仕事への関心から、観光産業学科のある九州産業大への進学を決めた。「別の国立大学にも受かっていたのですが、直感的にこの大学へ行きたいと思って、親の反対を押し切りました」。
大学へ入学すると、CAへの漠然とした憧れは、確固たる目標に変わることになる。「女性教官が元客室乗務員という素敵な方で、その人みたいになりたい、と強く思ったんです」。その教官からは仕事内容や心構え、英語など、CAとなるのに必要な事すべてを習った。授業以外でも研究室を訪ねては質問を繰り返し、知識や教養をどん欲に吸収した。「先生がとくに言われていたことは、日頃の生活が大事ということでした」。言葉づかい、立ち居振る舞い、身だしなみ…ふだんの姿が、試験の時や現場で働く時、にじみ出る。誰も見ていないところでも、誰にも恥ずかしくない振る舞いをしなさい、という教えは今でも身にしみているという。

神社から、空へ。

あきらめなければ道はひらける。

新卒時の採用試験は、残念ながら不合格だった。ブライダル関係、旅行業など、力試し的に受験した他業種では合格した会社もあったが、CAへの夢をあきらめたくなかった。両親をはじめ周りの人たちからは猛反対されたが、卒業後の浪人を決意。東京での受験に備えるため、上京してひとり暮らしを始めた。「この頃には、親ももうあきらめていたみたいです」と笑う。ふだん、あまり小さな事にこだわらない性格だが、大事な場面では自分の意志を押し通すところがあるらしい…と、振り返っての自己分析だ。東京でアルバイトと勉強をしながら受験時期を待ち、2011年12月、晴れて現在の会社に入社した。
だが、採用されても最初は訓練生として、サービス時の言葉づかい、立ち居振る舞い、火災発生や緊急脱出時の保安訓練などの訓練を受け、その習熟度を確認するテストにすべて合格しないと客室乗務員にはなれない。「私たちのちょっとしたミスがお客様の命取りになる恐れもあるので、つねに油断できません」。現場に出て3年目になる今もマニュアルは手放さず、常に読み返しているという。

あきらめなければ道はひらける。

人生とともにCAとしても成長したい。

仕事で一番気をつけていることは体調管理だ。一日のうちに何百キロも移動するため、気温差や気候の変化に堪えられる体力が必要なのだ。地上では小さな不調でも、上空では症状がひどくなることもある。緊張の連続のようだが、休みの日はジムで運動したり、友だちと旅行に出かけたりしてリフレッシュしている。「この前の休みには、友だちと日帰りで沖縄へ行ったんです。仕事ではいつも行ってるんですけど…」。
将来、結婚して子どもが生まれても、この仕事を続けたいと思っている。「子どものいる先輩を見ていると、やはりお客様への気配りがこまやかです。私も、いろいろな人生経験を重ねて、幅広い年代やさまざまな立場のお客様の気持ちに寄り添えるCAに成長していきたいです」。
CAになりたいという若い人へのメッセージを尋ねると、迷わず「どんな目標であっても、あきらめないで挑戦し続けることです」と、まっすぐな瞳で答えてくれた。

人生とともにCAとしても成長したい。

取材 2014年5月