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医療研究開発職

「まぁ、何とかなるだろう」

内山 朝子(うちやま あさこ)

期待されているのが分かるので、幸せに感じます。
信じてもらえる分、頑張りたい!


風邪が流行する季節。「ウイルスは生き物なのか、そうでないのか、実は、まだ定説は定まっていないんです」と話す医療の最先端の分野で研究者として働く、内山さんにお話を伺いました。

 

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2つの部署

「免疫・ウイルス研究室 室長」「iPS細胞治療プロジェクト支援室 室長」と2つの肩書きを持つ内山さん。〈免疫・ウイルス研究室〉は、動物の病原体検査のシステム開発が目的の、内山さんの入社と同時期に新設された部署だ。動物が最初から病気を持っていないかどうかを効率的かつ感度よく検査するシステムを開発するところだ。現在7名の研究者が所属している。
「みんなそれまでの経歴が違うので、研究のアプローチや仕事の仕方が異なり、それぞれの常識をお互いに学び合いながら仕事をしています」
〈iPS細胞治療プロジェクト支援室〉は、再生医療の分野で、製薬メーカーや大学から製品の安全性試験や薬効薬理試験を請け負う窓口をしているという。再生医療は新しい分野でもあり、開発の定石が決まっていない。これから伸びる分野であり、活躍を期待され、会社の目玉プロジェクトとして昨年7月に創設された部署だ。学校のテストと違って正解のないもの、むしろ世の中に「これが正解です」と結果を示すことに取り組むのはさぞや大変かと思うが、
「期待されているのが分かるので、幸せに感じます。信じてもらえる分、頑張りたい!」と生き生きとした表情で内山さんは話す。

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「まぁ、何とかなるだろう」

もともと長野県出身の内山さん。アメリカでの16年の生活の後、アメリカ人のご主人と一緒に鹿児島にやってきている。浪人生の時、日本の大学の在り方に疑問を感じ、高校の先生と相談して、アメリカの大学を目指したという。
「大学の試験といっても、高校の成績と英語の試験(TOEFL)のみ。人生を変えてみよう、だったら生きる国を変えてみよう・・・まぁ、何とかなるだろう(笑)と思って。でも、最初の1年間は本当によく泣いていました。大学で学ぶ内容はそれほど難しくないのですが、言葉と文化の壁が・・・」
それを必死に乗り越え、落ちついた生活が送れるようになった頃、俄然やる気がでてきたという。そして、2年生の時、大学のアドバイザーの勧めで将来の科学者を育てるプログラム、『Undergraduate Biology Research Program』に応募、見事に選抜され(なんと4万5千人のうちの20人)、3年生からは給料をもらいながら、研究生活をはじめることとなる。獣医になるつもりで州立アリゾナ大学の獣医学部に入学した内山さんだが、「それほど動物が好きではないのかもしれない」と感じ、学部内にあったウイルス研究室で研究に取り組んだ。そこで博士号を取得し、さらに研究を進めるためニューヨーク州にあるコーネル大学に研究員として移籍したという。
「やはり人との出会いは大切ですね。入学当時のアドバイザー、研究を指導してくれた大学教授など、他にも出会った方々に恵まれていました。そして、今お世話になっている新日本科学の人事の方とボストンキャリアフォーラムで出会い、今ここにいます」
内山さんと話しをしていると、内山さん自身がそういった人たちをひき付けているように感じる。真剣に、そして一生懸命に何かに取り組んでいれば、誰かが見てくれているものだ。

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「何かしら会社を良くしたい」

内山さんの会社では、上場企業として、またグローバル企業としての誇りをもって、多くの人が働いている。「世界との競争力を高めたい!」と話す内山さん。会社では、『社員のための英語の先生』を務めることもあるという。
「せっかくお世話になっているのだから、何かしら会社を良くしたいですね。英語力だけじゃダメ、考えていることを言葉にして主張しなきゃ!もっともっとディスカッションしなきゃ」
一方で、4年前〈免疫・ウイルス研究室〉発足の際、活躍場所を自分でつくるチャンスを与えられたという。
「まず、建物を研究室仕様に建て直すことから始めました。今まで当たり前と思っていた実験室のコンセントや空調の位置の意味を初めて考え、建築設計士の偉大さを知りました(笑)」
そんな内山さんだが、『ありがとう』『すみません』『お願いします』の3つの言葉は忘れないようにしているという。人との出会いに支えられてきた内山さんは先端医療の分野で世界の未来を支えていく。 

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取材:2016年11月