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特別支援学校教諭

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迫 利通(さこ としみち)

1968年生まれ 日置市出身。
伊集院中、松陽高校、福岡教育大学卒業。初任地は大根占中、その後は紫原中、中種子養護学校、串木野養護学校を経て、平成23年4月新設校(高等特別支援学校)開校準備室に赴任。平成24年4月鹿児島高等特別支援学校教諭に就任。

卒業生に「社会に貢献している」という
実感を持って働いてほしいと願っています。


2012年に開校した「鹿児島高等特別支援学校」。鹿児島東高校に隣接し、北に吉野台地、東に桜島を望む。1997年、11万人もの署名を集め、その設立の必要性が提言され、実現された学校だ。
今回はその設立準備から関わる迫先生にお会いして話を伺った。

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素直な生徒に囲まれて過ごした教育実習

「文章を書くのが好きで、新聞記者とかなれたらいいなぁと思っていました。ただ、就労の意識は低くて、新聞記者になるにはどんな大学に行って、どんな道筋でなれるんだと具体的に考えたことはなかったですね」。実際、高校では理系に属し、受験の頃には美術を勉強したいと思うようになっていた。結局、教育大学の小学校美術へ進学。美術史、教科教育などの講義に加え、デザイン、陶芸、彫刻、絵画など実技の毎日だった。それでも教師の道に進むかどうかは決めていなかった。大学4年のとき地元の中学校で教育実習にのぞんだ。当時の指導教官となった先生の学級経営を間近に見た。生徒同士の人間関係を細やかに見守り、生徒の素直さを存分に引き出していた。「一体感のあるクラスでした。素直な生徒に囲まれて、充実した日々を過ごさせてもらいました。福岡の大学に戻る日には全員が駅まで見送りに来てくれたこともしっかり覚えています」。迫さんに『教師をやってみよう』と決心させた2週間となった。

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心をつき動かされた新しい世界

教師になってまもない頃、筋ジストロフィーという難病を患うある養護学校の生徒の作文に出会った。思春期となり、自分を見つめ、自我に目覚める中、それとは反比例して肉体が衰微していき、通常の学校生活は送れなくなる。やがてはそう遠くない未来に死が迫っている現実をどのように受け止めているかを綴ったものだった。「少しも後ろ向きな姿勢をみせない文章でした。彼の親や先生から承諾を得た後、道徳の時間にクラスの生徒たちにその作文を読んで感想文を書いてもらったんです。生徒たちに生きる意味を感じ取ってほしいという思いからでした」。後日、その感想文を携え、迫さんは初めてその生徒のもとを訪れた。そして、彼との出会いが障害児教育へ興味をもつきっかけとなった。話した印象はほかの中学生と何も変わらない。気持ちも同じ多感な中学生だった。支える看護師や先生たちもみんなオープンで、ポジティブで、外からは見えていなかった景色がそこにはあった。『もっとこの現場を知りたい』。異動に際し、特別支援学校への希望を出した。

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高特支の使命

一般の中学校、高校では教材観、指導観が中心だ。教えるべき内容の意味や意義をどう伝え、学級全体をどう引き上げていくかが求められる。特別支援学校では、一人ひとりの実態に合わせて個別の指導計画を独自に作っていくのが特徴だという。「軽度の知的障害の子どもたちが通うここ高特支(高等特別支援学校)は生徒の就労を使命としています。私たち教員は生徒たちにどういう学習内容を教えれば社会的に自立できるのか、どういう技能を身につけさせれば職場で貢献できるのかを常に課題にしています。卒業生には『社会に貢献している』という実感を持って働いてほしいですね。そのために全職員で、生徒の働き口を開拓しようと動いています。今はまだ、ここの認知度が低くて、これからもっともっとうちの子どもたちを社会にアピールしていきたいです」。

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初めての給料

取材の日、企業向けガイダンスが開かれ、迫さんは、それぞれのコースの生徒たちが企業に対してプレゼンをする手伝いをしていた。もちろん主役は生徒たち。50名近く集まった企業や団体の人事担当者に向けてパソコンを操りプロジェクターを担当する生徒。大きな声で説明をする生徒。福祉班はベッドメイキングの実演し、木工班は自作の椅子をかかげ、製作過程の発表を行った。休み時間、発表を終えた調理班の一人が後ろにいた私たちに気づいてクッキーを差し出した。とてもおいしい。「職場実習などでも頑張っていますよ。うちの生徒たちは。今年初めて一期生が卒業したばかりですが、初任給が出たからと、学校にお菓子を持ってきてくれる生徒もいたんです。中には、職場の上司から学校に連絡が入って、どうも昼食をとっていない様子だと。本人に会って話を聞くと、お給料を大事にしすぎて食費を切り詰めていたそうなんです。ここを巣立っていった卒業生たちは金銭問題や恋愛関係など現実社会の難しさにも向き合っていくことになると思います」。ちょっと心配そうな表情を浮かべた。でも同時に、生徒の可能性を信じ、その未来に大きな期待を寄せているのも高特支の先生たちではないだろうか。

 

取材:2015年5月