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NPO法人スタッフ

桜島を博物館に

久木田 智美(くきた ともみ)

桜島をいろんな角度から盛り上げたい。

鹿児島県のシンボル、桜島。「灰がなければいい場所なんだけれど。」と人は言うが、この桜島や火山灰を観光資源として捉え、人と火山の共生を目指して活動する人がいる。商品開発や観光ガイドなどを通じ、桜島をいろんな目線で楽しむことを提案する仕事に従事する久木田智美さんに、仕事の醍醐味を聞いた。

 

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桜島全体を博物館に

小さい頃からものづくりが好きだった久木田さんは大学進学では教育学部を選択。社会人のキャリアを美術科の教員としてスタートさせた。勤務地は横浜。「何もない鹿児島が好きではなくて。いつか出たいと思っていたんです」。都会での仕事と生活は刺激的だったが、結婚を機に鹿児島に帰った。大人になって改めて見回した鹿児島は、小さい頃に見た『何もない』世界と違って見えた。「実は、地域には魅力的な人や場所がたくさん。私にはそれが見えていないだけだったんです。鹿児島のために、なにかしたい。そう思って職場を探した時に出会ったのが、今の仕事です」。桜島ミュージアムは、桜島全体を博物館ととらえ、その自然や文化を、そのまま現地で体験する新しいタイプの博物館だ。もちろん、NPO法人という組織を維持するにはビジネスも必要だ。そこで、久木田さんの出番となる。

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あらゆる恵みを商品に

桜島の大自然がはぐくむヒジキ、椿、小みかんなどの農産物を、関連する会社や農家と協力し商品化を手がける久木田さん。フードコーディネーターやデザイナーと役割分担しながら、『ツバキノタネ』や『溶岩糖』など、桜島の大地を感じる10種類の商品「ジオの恵み」シリーズを開発している。「桜島をモチーフにデザインを考えると、溶岩にしても、火山灰にしても見た目が荒っぽいですから最初は本当に苦戦しました。(笑)」。失敗談はいくつもある。商品開発の段取りが全くわからずスケジュール組みがキツキツになったこと。自分の立ち位置がよくわかっていなかったこと。商品撮影などデザインする仕事の知識がなく意見できなかったことなどなど。逆に親身になりすぎて、相手の『言いなり状態』になるときもあった。いずれにしても自分と相手を知らずにアイデアは提供できない。失敗を糧に一つひとつの問題をクリアしていった久木田さん。その取り組みは今後も「ジオの恵み」シリーズ第2弾と自社ブランドの「つばき油」の商品開発へ続いていく。

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相手を思いやる仕事は全ての仕事に繋がる

教員時代、生徒の家庭内の問題で夜自宅へ駆けつけて親の話を聞いたり、いじめられた生徒の話を聞いたりしていた。生徒の成長のために生徒の思いや能力を形にしていく手伝いをするのが仕事だった。「今、仕事とする商品開発も、『~を作りたい』という意図を丁寧に形にしていく部分では同じだと感じています」。そこには関わる人たちへの配慮がある。旅行会社の営業時代には喋らない商品を魅力ある商品であると伝えることを考えていた。「桜島ミュージアムは観光客への桜島のナビゲーションや、イベントの開催、ガイドなど、常に人に何かを伝えて、発信する場所なので、当時の経験は非常に役に立っています」。相手を思いやる仕事は全ての仕事に繋がると久木田さんは改めて感じている。現在、彼女が奔走するイベント『灰フェス』。火山灰を前向きに捉えるイベントだ。「以前は与えられた仕事で成果を出すことを考えていましたが、今は自分たちで仕事を作り出すために知恵を絞っています」と話す久木田さん。桜島が鹿児島の新たなビジネスチャンスになる未来を目指し、彼女の挑戦は続く。

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取材:2015年5月