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介護施設コーディネーター/NPO法人理事長

安心を紹介する

田中 哲郎(たなか てつろう)

考えるだけでなく、
実際に住みたい施設を見に行ってほしいです。
目で確かめれば、
雰囲気が分かるはずです。


もし自分の親が介護施設を必要としたとき、あなたは最適な施設を見つけられるだろうか。
必要な介護保険サービスや費用は?
『NPO法人 くらしと介護』はそういった状況で相談に乗ってくれる心強い団体だ。代表の田中哲郎さんにお話を伺った。

 

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50で退職、NPOを立ち上げる

田中さんは大学卒業後、クレジットカード会社に就職した。27年間務めたが50歳のときに退職。母のパーキンソン病がきっかけだった。
「母の介護をしていたことで父も圧迫骨折を患ってしまって」
平成14年の暮れ、両親が同時期に入院となり、2人の介護のため月一で勤務地の福岡から鹿児島へ定期的に帰ってきていた。その後、会社には鹿児島に勤務希望を出したものの、仕事と家庭、介護の大変さから仕事を辞める決意をした。それからは介護をしながら行政書士の資格を取得しようと三年間頑張ったが実らなかった。そんな中、田中さんは両親の介護の経験や、周囲の話を聞いて、高齢者の介護施設探しが困難であることを知る。施設を探している高齢者やその家族と、自分の施設を紹介したい介護施設をWin-Winの関係につなげられるサイトを作成したいと考え一人株式会社を設立。掲載する施設と年間契約を結びサービスを始めた。しかし最初の頃は赤字だったという。
「そんな時に福祉関係の知り合いから相談業務の部分は社会の信用も得られ助成金の対象となるNPO法人にしたらいいのではないかと勧められました」。
そうして現在のNPO法人に形を変え、『くらしと介護』の活動が始まった。

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安心を紹介

『くらしと介護』では具体的にどのような活動を行っているのだろうか。本日取材に訪れていた福祉多目的スペース『オレンジテラス城西』も活動の一つの場所になっている。ここで毎週火曜日に高齢者施設選びの無料相談会を行う。まず、相談者にヒアリングを行い、『くらしと介護』で条件に合う施設をリストアップする。この際田中さんが重視しているのが利用する人が安心して満足のできる生活が送れることと介護レベルに合わせた施設選びだ。施設には種類があり、入居対象者の介護レベルにも要支援1~2、要介護1~5がある。要支援対象者はトイレや着替えなど身の回りのことはできるが、自宅で一人の生活がやや困難になっている人たちで、市の地域包括支援センターが最初の窓口となる。そこから施設に関する相談が田中さんのNPO法人に入り、『ケアハウス』や『サービス付高齢者向け住宅』などの施設を紹介する。
「要介護者は要支援者以上に介護を必要としている方です。認知症がすすんで日常の生活がむずかしくなったりした方も対象になります。相談者へは『介護付老人ホーム』や『住宅型有料老人ホーム』などの紹介し、要介護のレベルが上がった場合は『特別養護老人ホーム』などへの住み替えなどを提案します」。
相談者には要介護者の子供さんのほか兄弟や甥御さん、姪御さんなど、50歳代から70歳代のかたが見えるそうだ。鹿児島の実家に住む親のために、休暇を取って関東や関西から来られる方もいる。月に20件ほどの相談があり、5件ほどが実際の入居につながるそうだ。

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見て感じる自分のもう一つの家

田中さんは実際に目で確かめて施設を決めることの重要性を教えてくれた。
「最近は、家族だけがサービスの内容を気に入って選んだり、介護専門の方の紹介や助言で施設を決めてしまったりしているケースも多いです」。
後日、本人を連れて施設見学に行くと、施設の雰囲気から本人が入居したくない、と拒否する事もあったそうだ。また、頻繁にかかわるからこそ実際にケアしてくれる職員との相性も大事だ。
「例えば実際に見学したら玄関の横にスリッパが山積みなんてことも。実際に見に行くことで施設の雰囲気を知ることができます」
相談会でそういった施設の『見方』も教えてくれる。

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目指す未来

「将来は高齢者入居施設選びの相談サロンをつくりたいですね」。駅や街中など便利な場所に施設のパンフレットを置くことができれば、いつでも自由に手に取ることもでき、遠くから相談に来る方も時間に縛られずにすむ。なおかつ田中さん自身もその場で相談にのれるサロンが理想だと語る。
「NPOの活動は他力本願ではなくて、自分で動かなければなりません。知名度を上げるにしても一部テレビなどで取り上げられやすい災害などの支援団体であれば協力してくれる人への認知度が大きいかもしれませんが、全ての団体がそうではないですからね。ボランティアではないので長く活動を続けるなら、補助金を当てにせず、収支も含めた仕事のスタイル、安定した収益の基盤を確保する必要があります」
介護する立場から立ち上げた田中さんの言葉には中途半端ではない、信念を感じた。

 

取材:2019年2月