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海洋土木工

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平 剛成(ひら たけなり)

1980年生まれ 日置市伊集院町出身。
伊集院北中、伊集院高校、鹿児島大学水産学部卒業 
平成15年信幸建設(株)東日本支社機電工事部入社。現在に至る。

がっつり働いてゆっくり休む。
私はこの仕事の勤務態勢が気に入っています。
一般サラリーマンは向いていなかったかも。
次の現場にワクワクしていますから。

家やマンション、学校などあらゆる建造物には基礎工事が必要だ。
強風や地震がきてもしっかり立っていられるように地面と上に建つものをつなぎとめるための工事だが、これは陸での話。
では防波堤や港など、建造物が海上ならばどうなるだろう。海上の土木工事に従事する平さんに話を伺った。

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海に浮かぶ滑走路

今から約6年ほど前のこと。羽田空港は新滑走路の建設を急いでいた。埋め立て構造の土台のほか、河口付近は鋼鉄製の桟橋を土台とする特殊な滑走路だ。理由は環境への配慮から。下には自由に水が流れることになる。東京湾には働く船が集結し、さながら「海の工事現場」の様相を呈していたという。その作業船の中に平さんはいた。「甲板部で、機器類の操作をしていました。陸上では杭を地中に打って基礎を強化しますが、海では杭の代わりに固化材としてセメントミルクを海底下の地盤に添加注入します。固化すると杭のような柱上の支えになります」。海が相手だけに注入に至るまでの掘削やパイプの挿入などその工事は複雑で難しい。しかし、ジャンボジェット機でも安全に離発着できるように、滑走路の平面性を維持するための地盤強化は不可欠だった。

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海のご褒美

現場は空港や防波堤・港などの基礎工事が多い。沿岸に浮かべた真四角の箱船(台船)の上には多くの機器が装備されており、その操作はオペレーター業務とよばれる。船の種類によってはクレーンや油圧ショベルなどの重機を船上から操作し海底を工事する。「いつ荒れるか分からない海の上です。とくに台風シーズンは船内がピリピリします。日頃から機器や道具の点検をして咄嗟のときに備えています」。実は、機器の不調に気づくのが遅れ、施工を半日止めた苦い経験が平さんにはある。非常時の判断スピード・協力体制の重要さを痛感した。付属船業務は、付属船を操縦して、自走できない現場の台船までスタッフを移動させたり、物品の搬入・搬出を行ったりする仕事だ。海ならではの苦労もある。それは錆。整備作業として錆を落とし塗装し直す。台船は甲板部も鉄のため、広範囲の作業になるが、この力仕事を怠ると事故につながりかねない。逆に海ならではのご褒美がある。「東京湾の現場だと、ディズニーランドの花火の全景が見えます。時間になるとみんなソワソワしだして、自分もその一人ですが、大の大人がかわいいですよ。明石大橋を下から見たり、飛行機の下部を間近に見たり、陸上では見ることができない光景ですね」。単身赴任のため家族の負担は大きいはずと語る平さん。久しぶりに家族の元気な顔を見ると妻への感謝の気持ちで一杯になる。「私の休みに、子どもたちも予定を考えて待っているみたいで、こっちもハッスルします。見送りの時の元気な『いってらっしゃい』は元気の素です」

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やっぱり海が好き

仕事の現場は小、中、高、大学と同等かそれ以上の学び舎だという。しかし、仕事に就くまではこんな職業があることすら知らなかった。大学4年時での就活は失敗。就職氷河期といわれていた時代だ。「当時、水産学部には海技免状を取得する一年間の専攻科がありました。その専攻科で作業船のことを知り現在の会社を決めました。4年時の失敗がなければここにいないと思います」。水産学部での航海系の講義、とくに海象・気象は今の仕事に直結しているそうだ。実習で学んだロープワークは入社後の大きなアドバンテージとなった。「長期の航海実習では狭い空間で陸より孤立した状況のなか食事・風呂などの生活行動を共にします。そこで経験した分、すんなり仕事に溶け込めました。大学で得た一番の収穫かもしれません」。ただ船酔いに関しては大学時代、周りに歴代最弱と言われたことも。今では酔うことに慣れすぎて気にさえしなくなった。「中高時代は勉強、部活ともに頑張っていませんでした(笑)。やりたいことを見つけては将来設計というか妄想していましたね」。高校の頃、生物、特に海の生き物に興味を持ち、大学の進学に影響。将来これになるんだという強い意志はなかったけれど、海に携わっていたい漠然とした気持ちだけはあった。就職後、しばらくして実家に帰省した日のこと。面白いものを見つけたと言われ幼稚園時代のアルバムを見せられた。記憶にはなかったが自分が書いたものだ。そこにあった将来の夢『船長になりたい』。仕事のことなどわからない昔のこと。平さんにはやっぱり海があった。

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取材:2015年11月