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社会保険労務士

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児玉 里美(こだま さとみ)

1982年生まれ 鹿児島市出身。
南中学校、甲南高校、九州大学文学部卒業。大手学習塾に平成17年入社。国語講師として3年間勤務。退社後、鹿児島市の社労士事務所に事務職として勤務。在職中、社会保険労務士の資格を取得。のち、鹿児島労働局の臨時職を経て、平成27年エス労務管理事務所を開業。現在に至る。

いろんな仕事を早く知ることができて、いいなぁ(笑)


会社であれ、個人であれ、人を雇うと、そこに労働上の契約が生まれる。給与・勤務時間から有給休暇に至るまでさまざまな就労規則がある。従業員がけがをしたときの補償は?社会保険料はどう算出するの?労働関係上の法律で雇う側が知らないといけないことは多い。
人を雇用するときに力になるのが社会保険労務士(社労士)だ。

 

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転職を考えつつ、結婚も考えつつ

幼い頃から一人で本を読むのが好きだった。大きくなったら母のように主婦になるのかなぁと思っていた。小学校、中学校を通じてなりたいもののイメージはなかった。高校時代、歴史が好きで、博物館で働けたらと思ったことはあったが、仕事をはっきり意識したのは大学2年の後半。「公務員試験を受けようと、3年からは予備校にも通いました。でも、4年の春から受けてきた試験はどこも受からず、秋採用をしている民間企業を探しました」。入社した大手学習塾には国語の講師として都城に赴任した。生徒と接するのは楽しかったという児玉さん。ただ、そこは子どもたちの競争の場だった。他の場でなら輝く子どもたちを勉強のことでしか褒めてあげられないジレンマがあった。反抗期を迎えた中学生からは甘く見られることも多かった。「まわりの先生はみんな個性派揃いでした。塾講師として素質のある人は経験がなくてもすぐに生徒の気持ちをつかんで人気が出るんです。私には向いていない。挫折しました。転職を考えつつ、結婚も考えつつ、でも、とにかく3年は頑張ろう」と決めた。

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自分、がんばれるかも

「退職後は旅に出ました(笑)」。モラトリアムの旅から戻ると社会に戻る準備を始めた。職業訓練校に通うと、そこでは税理事務所での2ヶ月の研修があった。「この研修先ではじめて行政書士や社会保険労務士(社労士)という職業を知ったんです。こんな冊子を目にする高校生たちは、いろんな仕事を早く知って、いいなぁ(笑)」。社労士事務所で事務職として働き出した児玉さん。はじめは隅っこのほうで作業をしていたが、半年ほど経って、一番ベテランの女性社員が産休に入り、その仕事を任された。やることも覚えることも増え精一杯の毎日。「でも不思議とだんだんおもしろさを感じて、ここで初めて『自分、がんばれるかも』って思ったんです」。将来のキャリアの道筋も見えた気がしたという児玉さん。それは仕事の幅が広がったせいだ。「事業所ごとに保険料を計算し、請求書の作成や集金をして、取りまとめて労働局に納付するんです。私一人で120社を担当しました」。以前は仕事に適応できていないなと感じていたが、今は、社労士の資格を取って経営者の相談を受けてみたい、そんなふうに変わっていた。

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受験勉強、再び

社労士の国家試験の科目は10科目。労働基準法、年金制度など法律的なものがメインだ。「仕事をしながらでしたが、『あっ、あの法律がこの事務手続きとつながっているんだ!』なんてことが多くて、事務職の経験は他の人より有利になったのかもしれません」。勉強時間を作るのに苦労しながらも、2年で合格した児玉さん。すぐに独立はしなかった。現場で重要な事務を任されていたこともあった。経験がないのに独立してうまくいく自信も正直なかった。1年悩んだ末、修行に出ることを決意。労働局の臨時職で経験を積むことになった。主な仕事は助成金審査の窓口業務。さらに100人も200人も従業員のいる会社を一人で回り、労務管理が法的に適切かを調査した。「助成金とはどういうものかも分かるようになりましたし、経営者という、ふつうでは会えないタイプの人たちと話ができたのは大きな経験でした」

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妥協点

「会社の経営者は本業に忙しいですし、専門以外の仕事は知っている人に聞いたほうが結果的には無駄な時間やお金を使わずにすむと思います」。税の計算やアドバイスを税理士に頼むのと同じだというが、時に社労士は従業員と経営者の意見の対立にも立ち会う。「労使関係の調整は、だれか個人のためではなく、会社、そして社会のためになる妥協点になるべきです。だから私たちのような第三者が間に入る意味があると思います」。不安のなか、児玉さんは独立を決意した。「お客様第一号は、以前同僚だった塾の先生でした。その方が独立開業を機に社労士を探していたところ、知り合いから偶然私のことを聞き、訪ねてこられたんです。びっくりしました」。そう笑って話す児玉さんはこれからも人の縁の中でキャリアを積み上げていく。

 

取材:2016年6月