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研究開発職

研究開発職

村上 宙也(むらかみ みちや)

1985年生まれ 広島県呉市出身 呉三津田高校、日本大学理工学部航空宇宙工学科、同大学院機械工学専攻卒業。2011年京セラ株式会社入社、鹿児島国分工場で自動車部品開発部に所属し商品開発を担当。

"表に出るのはたった1つの成功。
裏には何百回、何千回もの失敗があるんです。"

セラミックスっていったい何だろう? 聞くと、縄文土器もごはん茶碗も、粘土などの自然材料を焼き固めたものはセラミックスだという。しかし現在、セラミックスといえばファインセラミックスをさすことが多い。精密部品に多く使われるファインセラミックスの部品・材料の研究開発を担うのが村上さんだ。

出会い、そして「やらんといかん」

村上さんは広島県の出身。父親は化学系のエンジニアだった。「休みを利用して単身赴任の父に会いに行きました。工場に連れて行ってくれて機械にもさわらせてくれたんですよ」父の背中を見て育った村上さん。将来は飛行機の勉強をしたいと思っていた。しかし成績は伸び悩み、高3の夏、勉強を投げだした。学校に行き授業はうけるが「できないなぁ」と自分の中に引きこもった。大学受験には失敗。地元の予備校へと通った。そこで、楽しい授業で定評のある英語の先生と直接話す機会があった。「英語のどうのこうのではなく、学ぶ姿勢のような話でした。『やらんといかん』そんな気持ちになれたんです」壁を一つ突き破った。大学は理工学部へ進学。そこでも出会いがあった。「人ってだれしも好き嫌いはありますよね。厳しくて一番苦手な教授がいたんです。でも会いに行ったんです。『ここがわかりません。教えて下さい』って」。結局その教授の研究室に入り、大学院にも進学。学会にも同行させてもらえる、まさに恩師となった。大学では航空宇宙の分野で機体パーツの材料の研究や飛行実験に没頭。ずっと実験を続けていた。「大学生なのに勤務シフトがあって(笑)」。その頃、セラミックスやチタンといった材料にも興味を持ち始めた。

京セラ株式会社 鹿児島国分工場

『わぁ、失敗した』の繰り返し

ファインセラミックスは、厳選された原料粉末を微妙な割合で配合し、最適な形状に加工する。そして最適な温度で焼結。この製造プロセスを完全にコントロールできたとき、工業用部品として高い付加価値をもつ。その硬さや変形しにくい特性から、日常使う電化製品や電子機器などの精密部品、釣具の部品、包丁に至るまで、その用途は幅広い。日々、実験を続ける村上さんは言う。「原料の比率を細かく変え、試作品ができると動かしたり、押さえつけたり、引っ張ったり。『わぁ、割れた。失敗』の繰り返しです(笑)。つらいですけど楽しいです。周りがちゃんと見てくれていますから心が折れることはありません」

村上部屋

入社してすぐ、大きなプロジェクトに参画した。携帯電話のレシーバーの開発だった。ディスプレイから穴をなくし、振動で音を伝える機能をもつセラミック部品の開発だ。「騒がしい場所でも良く聞こえるんです。街でその機種を使っている人を見かけると、たまらなく嬉しいです。うちの会社の製品は、中を開けてみないと見えない部品が多いですから」。今は自動車に搭載するスピーカー部品の研究に取り組んでいる。研究内容は企業秘密だ。この日、いくつものセキュリティを解除しながら工場内の持ち場へと案内してくれた。招かれた部屋の一角には『村上部屋』と呼ばれる無響室があった。吸音材に覆われたその中に入ると声に反響がない。不思議な感覚だ。「この設備には結構費用がかかったんですよ。」製品開発の実験過程には必要なものだと会社を説得して作った部屋。この開発を成功させなければならない。

村上部屋

『やります』と言ってから考える

今日も工場にはビジネスの話をしに訪問客が絶えない。その多くはメーカーだ。「何年後かに、こんな便利な製品を作ってみたい、それにはこんな部品が必要だ」というコンセプトを語りにやってくる。それに対し、現時点の技術では実現できないものを、『やります』と答える。そこから考え抜く。そして、作り上げる。その社風は創業以来変わることはない。『ここに来られる方々は私たちに幸せを運んでくださる』。その言葉には、自分たちにチャレンジを運び、成長させてくれるビジネスパートナーへの感謝の気持ちが表れている。村上さんは言う。「表に出るのはたった1つの成功。裏には何百回、何千回もの失敗があるんです。失敗したら失敗したなりの何かがあると考えられる人が研究職には向いていると思います。コツコツまじめに、ですが、固定観念にとらわれずチャレンジすること。実験でもちょろっと変なものを混ぜてみたり(笑)。自分のきらいなものに毛嫌いしないことが大事かな」。帰りしな、私たちを案内してくださった労務課の方と村上さんが、行き交う同僚たちと挨拶をかわす。横目に賑わう社員食堂がみえた。そう、ここには4500人の社員が働いている。それぞれの強い思いを胸に。

『やります』と言ってから考える