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切絵作家

切絵作家

黒丸 玲奈(くろまる れいな)

喜界第一中学校、串木野中学校、伊集院高校、大分県立芸術文化短期大学(美術科 工芸染色専攻)、京都 川島テキスタイルスクール、奄美 鹿児島県工業技術指導センター 伝習生を経て現職。

"切絵作家という仕事"

自身の思いを形にして表現する「作家」という仕事。その道筋は多くの経験とさまざまな場所を移り住んだ経験が、幅広い表現を生み出す。さまざまな企業から切絵の依頼を受ける黒丸玲奈さんに、切絵が仕事になるまでの経緯をお聞きした。

ものづくりが大好きな小学生

小学校のときから、ものをつくるのが好きで、祖父母の大隅の実家によくいって竹とんぼ、おはし、貯金箱などいろんなものを作っていたという黒丸さん。竹細工は祖父、縫い物は祖母に習っていて、本格的な皮細工でコインケースやキーホルダーをつくったりしていた。「中学校・高校でも美術や工芸がすきでした。進路として選んだのは大分の短期大学美術科でしたが、その頃は自分が工芸を仕事にするというイメージはなかったです。工芸や美術を仕事にするには、先生くらいしかないと思っていましたから」。

京都での修行期間

短大で工芸染色を学んだ後、布を自分でつくれるようになりたいと考え、京都のテキスタイルスクール(テキスタイルとは、織物・布のこと)に進学する。着物、染色、ファイバーアート(繊維を使った芸術)など、布にまつわる様々なことを学んだ。その後、京都で友禅織製作の会社に就職した。振袖つくりにおける染めの工程を担当し、エアガンでぼかしをいれたり、染料を調合したり。ここでは短大時代の経験が生きた。充実した京都での生活だったが、一方で気持ちは故郷・鹿児島に向かい始めた。自分の落ち着ける、集中して仕事に向き合える環境をと思ったときに、鹿児島へのUターンを真剣に考え始めた。「鹿児島っていうのを思い出したときに、大島紬があるなぁって。ちょうど奄美大島で大島紬の技術学べる施設があることを知り、すぐに入学を決めました」。

アートイベントをきっかけに切絵作家へ

奄美で切絵と出会う

奄美大島の鹿児島県工業技術指導センター伝習生として23歳で鹿児島へ。日中は、朝から夕方まで大島紬の工程を勉強する日々が続く。図案、染色、織りの3工程それぞれに専門の職人が腕を競う厳しい世界で大島紬を学びながら、興味は徐々に奄美大島の歴史や文化に移っていく。「三線(さんしん)という奄美の伝統楽器があるんです。自分も演奏できるようになりたいと思って、地元の楽器屋さんで初心者用の手ごろなものを購入しました。その楽器ケースに名札入れがあって、そこに蝶とハイビスカスの簡単な切絵を作って入れていました。ある日、それが島の人の目にとまって、切絵を自分にも作ってほしいと言われたんです。それが今の切絵作家になったきっかけですね。趣味の延長で作っていた切絵でしたが、いきなり奄美市の写真スタジオのウインドデコレーションをお願いされました。 そのときは、お金をもらえるという感覚がなくて。作らせてもらえるなら作らせてください、というくらいのお話。仕事というよりは、自分の挑戦という感じでした」。

アートイベントをきっかけに切絵作家へ

そこからはとんとん拍子に活躍の場が広がっていく。「少しずつ切絵に割く時間が増えていきました。自分のなかでのチャレンジだと思って、鹿児島市で開催されているアートイベントに出展したんです。最初は黒丸玲奈という名前で出展するのが恥ずかしくてKIRI WORKという屋号で出展しました」。そこで初めて「作家」として観覧する側への対応を経験する。そして多くの観覧者が「作家 KIRI WORK」としての黒丸さんに前向きな反応を返してくれた。これがきっかけとなり、2010年、鹿児島に帰り、切絵作家としての本格的な活動を始める。最初はもちろん仕事は少ない。アルバイトをしながら切絵作品を作りためながら、少しずつ情報発信を続けていく。複数のアートイベントに出展するうちに、徐々にお客は増えてきた。鹿児島に軸足を移して4年、いまは黒丸玲奈という名前での活動も増えてきた。いまでは大手企業からの依頼も少なくない。

作家として、デザイナーとして、つくる楽しみを伝えたい

作家として、デザイナーとして、つくる楽しみを伝えたい

「作家という点では、自分の作りたいものを作る時間が大切だけれど、切絵を使ってデザインしたいというお客さんが増えてきたいま、オーダー製作も大事にしていきたいですね。また、そういったデザインの仕事を今後増やしていくためにも、デザイナーさんに対して、切絵というアプローチをメニューの中に持ってくださるよう働きかけていくことも大切だなあと思っています」。
最近は、子どもたちに向けて切絵体験の講習会を開くなど講師の仕事も多いという。取材の日は、鹿児島市内の商業施設で子供たちに切絵の楽しさを伝えるワークショップの最中だった。子どもたちの頼りない手元を見つめる黒丸さんのまなざしは温かい。自身が子どもの頃に家族と取り組んだ工作の原体験が、いまの活動にもしっかり息づいていることがわかる。

高校生たちへ

最後に、高校生へのメッセージをいただいた。
「何をしたいかというのは早く見つけたほうがいいと思う。たとえば、ものづくりを志すのであれば、やっぱり一流のところに丁稚奉公するのが一番いいと思います。技術工芸は年月がものをいう部分もあるので、早いうちからその道に入るというのはとても大切す。
それと、できるだけ多くの人に会い、いろんなものを見ることも大事。私は切り絵作家ですが、切絵をどれだけ見ていてもインスピレーションは沸かないです。陶芸をやっている人であっても陶芸だけ見てればいいかというとそういうわけでもない。アンテナは広く持っていたほうがいいと思います」。