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gardens′ Cinema代表理事

garden's Cinema代表理事

黒岩 美智子(くろいわ みちこ)

1958年鹿児島市まれ 谷山中学校、甲南高校、鹿児島大学法文学部国文学科(当時)卒業後、地元でOLを続けていたが、30歳のときに上京を決意。小さな映画の配給会社で営業と広報の仕事に就く。6年後に帰郷し、フリーライター、出版社勤務を経て、2006年からはアルバイトをしながら「鹿児島コミュニティシネマ」の活動を行う。

"映画を愛する一人の女性が
その理想を追いかけて・・・"

天文館、マルヤガーデンズの7階に、スクリーンが1つと椅子が39席の小さな映画館「ガーデンズシネマ」はある。上映作品には、後世に伝えたい不朽の名作や、世の中の様々な社会問題を扱うドキュメンタリーが多い。大手映画館とは一線を画すスタイルの映画館は、どのように誕生し、成り立ってきたのだろうか。

壁一面に貼られた上映作品のポスターを眺めていると、黒岩さんが声をかけてくださった。「29日公開の『チャップリン・ザ・ルーツ』、よろしければご覧ください」。聞けば、映画史上最大の天才、チャップリンの傑作短編集が、日本版特別企画で世界初公開されるとのこと。「言葉は一切使わないけど、体を張った演技は心を打つものがありますよ。こんな世の中だからこそ多くの人に観てもらいたい、元気になれる映画です」
映画を見た人が、新しい世界や次のステップに踏み込む勇気を得られるような『きっかけ』になる作品を厳選して上映しているというガーデンズシネマ。その強いこだわりは、作品紹介をするオリジナルの館内表示や、上映前に黒岩さん自らが観客の前に立って行う前説にも及ぶ。いいものを1人でも多くの人に届けることが役目だと、彼女は話す。

映画好きの映画好きによる映画好きのための映画館

このミニシアターの運営は、黒岩さんが代表を務める『鹿児島コミュニティシネマ』。天文館から映画館が消えた2006年に設立されて以降、映画の自主上映を行うサークルとして地道な活動を続けてきた。
代表の黒岩さんは、かつては鹿児島で普通にOLをしていたが、このまま自分のやりたいことを出来ずに一生を終えるのは嫌だ!と上京を決意。何のツテも無いままに映画業界に乗り込み、そこで様々な人脈を得るとともに、多くの一流との出会いを通して映画の世界に一層のめりこんでいった。自分の価値観を変えてくれた人や映画作品を、鹿児島にも広めたい。その思いが黒岩さんを今日まで駆り立ててきたのである。

映画好きの、映画好きによる、映画好きのための映画館

そんな黒岩さんに転機が訪れたのは2010年。鹿児島市内にマルヤガーデンズがオープンすることとなり、その7階にミニシアターを開設することとなったのだ。念願の映画館運営。もちろんミニシアターの経営は初めて経験することばかりだったが、東京での映画関係者との人脈を総動員して、どうにか開業にこぎつけた。今では、1,000人を超える鹿児島コミュニティシネマの会員の方をはじめ、多くの人に支えられながら映画館を運営する。実は、ガーデンズシネマでチケットのもぎりをしているスタッフも、その大半がボランティア。まさに映画好きの、映画好きによる、映画好きのための映画館なのだ。

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もっと多くの人に、何かの『きっかけ』を提供する映画館へ

黒岩さんが映画好きになったきっかけも、一本の映画だった。『アラビアのロレンス』。この映画のメッセージは「理想を追いかけて生きていくことのすばらしさ」。困難を1つ1つ乗り越えながら、理想を追い求めてここまで走ってきたと言う黒岩さん。オープンから3年目に突入し、最近の課題は広報活動とのこと。もっと多くの人に、映画を通して新しい発見を得てもらいたいという理想を掲げる一方で、膨大な仕事量に忙殺される毎日と言う。上映活動の他にも、映画について語り合うイベントの開催や、地域のNPO法人と連携した上映会の開催など、仕事の幅は広いのだ。今後、もっと広報活動に時間を割けるようにするため、少しずつサポーターである会員さんの数も増やしていきたいと黒岩さんは話す。
映画という娯楽は、多くの人を巻き込み、日常の一部になることで文化となる。そして文化が成熟していくことで街の魅力は高まる。すばらしい理想を追い求め、鹿児島コミュニティシネマの活動は、今後ますます魅力的なものになっていくに違いない。

取材 2012年11月 No.9 しごとびと