鹿児島のしごとびと > 仕事を知る > 人に教える・人に伝える > ラジオディレクター

ラジオディレクター

ラジオディレクター

七枝 大典(ななつえ だいすけ)

1977年 鹿児島市生まれ 西陵中、鹿児島実業高校卒業。大学を経て、平成15年からMBCサンステージ勤務。現在、南日本放送編成局ラジオ制作部でラジオディレクターを務める。

"ラジオで鹿児島を盛り上げたい"

ふとラジオから流れる音楽に励まされ、時には心洗われた経験はないだろうか。音だけで伝える、音だけが聞こえることで成り立つ繊細な世界。昔からラジオとリスナーの間には、独特の関係性があったと七枝さんは語る。話し手は声の先にいるリスナーの情景を思い描き、リスナーは話し手の息遣いを感じ取る。

鹿児島の可能性を思う

アルバイトからのスタート

「初めて仕事を意識したのが小学校のとき吉野ヶ里遺跡を訪れたときでした。もともと祖父の影響で歴史が好きで、将来は考古学者になりたい。世界を股に駆けて遺跡発掘を手がけたいと夢を馳せました」今の仕事につながるきっかけは大学時代、放送局でアルバイトをしていた友人から「今、ラジオ局でバイトを探してるんだけど」と話を聞いたときだった。「当時やっていたバイトより面白そうだし、ラジオが好きでした。時給も50円ぐらい高かったんです(笑)」すべての始まりはそこからだった。ディレクターの指示のもと細々(こまごま)と動くAD(アシスタントディレクター)の仕事だ。「最初は拍手の練習からでした。職人気質の技術職という面も強いので手取り足取りではなかったけれど、何よりも番組に関わる全ての先輩方が私の仕事を助け、教えてくれました」いつしか七枝さんは、このままラジオの世界で働きたいと思うようになっていた。しかし、就職の年は求人がゼロ。やむなく別の会社の経理として就職した。2年後、再びチャンスがめぐってくる。もとの上司から新規求人で声をかけられたのだ。一も二もなくマスコミの世界へと舞い戻った。

仕事の中身

ディレクターの仕事を教えて欲しいと尋ねたところ、七枝さんは開口一番「プロデューサーと、ADの中間です」番組作りに関して全体を統括するプロデューサーの指示のもと、複数のディレクターが1週間の番組を分担。番組ごとに、2ヶ月先まで大まかなテーマの予定を組む。細かい内容や進行予定などは週単位で打ち合わせていく。それに伴い、ゲストなど出演者のブッキング(日程調整)や番組原稿を執筆。一方でインタビュー取材やCM、BGMの選曲などの素材集め、複数の素材から出る声や音をパソコンで編集してリスナーが聞きやすい状態にする。

Radio Burn(レディオ バーン)

南日本放送では4月に春夏編成、10月に秋冬編成という番組の改編時期がある。自主制作率が50%以上、さらに生放送も多い。七枝さんは現在6本の番組を担当。その一つが『Radio Burn』だ。「この番組はゲストとのトークがメインです。出演者への事前打ち合わせを行い本番に臨むのは当然ですが、番組直前の打ち合わせは簡単に終え、ゲストはMC(司会進行役)にお任せしています。僕は、ほとんど喋りません。無責任と思われるかもしれませんが、その方が「予定調和」になりにくいと考えています。原稿に書いてある事をそのまま読んだとしても成立しますが、そこにしゃべり手であるMCとゲストの好奇心がないと二人の間に距離感みたいなものが出てしまい、ギクシャクしてしまう。リスナー側は、番組にどう参加すればいいのか戸惑ってしまうと思うんです」短時間でゲストとの間合いをどれだけ縮められるかによって、番組の盛り上がり方は大きく変わるという。2時間の生放送で、MCはゲストが言いたい事をうまく引き出す。リスナーは、それぞれのリアクションをツイッターやフェイスブック、メール、ファックスで投稿する。その三者三様が、どんどん積み重なって、打ち合わせでは全く出てこなかったところに着地し、次週へと続く。「収録を兼ねた番組イベントをすることもあるんです」行き当たりばったりでは無く、ちゃんと意味のあるアクションをMC、ゲスト、リスナーが一体となって起こす。そこを大事にしたいと七枝さんは語る。

ラジオディレクター

鹿児島の可能性を思う

ラジオで鹿児島を盛り上げたい。番組作りの土台にはきまってその想いがある。「桜島、離島をはじめとした自然、歴史的背景、全国からも注目が集まる豊かな食材や温泉。それらを求めて鹿児島にいらっしゃる方が近年特に多いですよね。でも、ここに住む自分は、なかなかその素晴らしさに気付けないでいます。周りが豊かだから。考えてみれば贅沢ですね。小さい頃は灰を降らせる桜島に蓋をしたいと思っていましたが(笑)」

恩返し

仕事によっては長期の取材もある。昨年七枝さんは月1~2回のペースで甑島に行き、半年に渡って素材を集めた。その番組タイトル『響け、ゴッタンの音色』は、ゴッタンという楽器と演奏者の思いをつづったものだ。それぞれの取材での表情や景色を思い起こしながら音のシーンをつなげる。「仕上がりはわずか6分20秒ですが、番組という形になると達成感があります。でも、それ以上に感謝の気持ちが強いですね。かつて大先輩から言われたことがあるんです。『取材というのは、その人の大切な時間をもらっているんだ。大切な仕事、大切な空間に割って入るんだ。その分、こっちも仕事でお返しせんといかん』いってみれば、私の仕事はそういう取材に応じてくれる人との毎日です。仕事でお返しするとは日々の働き方、ひいては自分の生き方で恩返しをすることだと思っています。まだまだ未熟ですが、その気持ちで仕事に取り組んでいきたいです」人との出会いが仕事の原動力だと言い切る七枝さん。時に真剣な眼差し、時に顔をくしゃくしゃにして笑う。そばにいて安心感を与える存在といったらいいのだろうか。彼が仕事を通して得たオーラなのかもしれない。

仕事の中身

取材 2012年6月 No.7 しごとびと