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公認会計士

公認会計士

松野下 剛市(まつのした ごういち)

1960年生まれ 枕崎市出身 東京大学卒業後、日立金属株式会社勤務。その後、公認会計士取得のため2年間の浪人生活を経て、監査法人トーマツに11年間勤める。平成13年、鹿児島市内に公認会計士事務所並びに税理士事務所を開設する。サッカー(日本代表)とパソコンのMacを盲目的に愛する50歳。

" 感情に流されず、ずるいことに対して
怒る気持ちや、倫理的センスが大切です "

司法試験と並ぶ最難関の国家試験を突破しなければならない公認会計士。それだけに文系の大学生の憧れの職業である。しかし大企業の少ない鹿児島では馴染みのうすい仕事でもある。エンジニアとして就職した松野下さんがどうして公認会計士になったのか、そしてどんなことをされているのかをうかがった。

挫折からの再出発

高校を卒業後、一浪して東大理科Ⅰ類に入学した松野下さん。典型的な理系のエリートコースのはずである。「受験で燃え尽きました(笑)。大学時代はぼんやり過ごしていましたね。まわりは、その四年間を研究と実験に没頭している人も多かったですよ」大学卒業後はエンジニアとして企業に就職したが、大学で頑張っていた同期の人たちとの差は歴然だったという。「企業はプロの集団。自分はこの会社では通用しない。到底スキルが及ばないと痛感しましたね」三年で会社を辞めた松野下さんは、当時をこう振り返る。「何ひとつあてはありませんでした。無職です」そんな中、ご実家が商売をされていたということで、経営に関する仕事がしたいと思うようになった。「そこからは早かったです。情報収集に奔走し、二十七歳から二年間、公認会計士に向けて受験勉強をしました」二度目の浪人生をはじめることになる。「同級生たちはみんな働いてGNPを押し上げているのに、自分は仕事をしていない」その間あせりはあったそうだが、「勉強をやるしかない。本当に後がなかったですから(笑)」そして、見事公認会計士試験に合格し、監査法人に就職する。では、公認会計士の仕事とはどんなものだろうか。

挫折からの再出発

お金の流れの見張り番

企業は、一年に一回は「決算」を行わなければならない。その決算書を見て、正しいかどうか、お金の流れに誤りがないかをチェックする。これを「監査」という。監査は会計士にしかできない仕事だ。監査の基準は、会社法によって決められている。対象となるのは資本金五億円以上または負債額二百億円以上の会社。また、株式公開している上場企業も必ず監査を行わなければならない。「なぜそれが必要なのか。それは、ステークホルダー(会社を取り巻く利害関係者)に正しい情報を伝えなければならないからです」会社は経営者、従業員で構成されているが、株主、取引先、家族、地域住民などとも関わっているし、税金を納めて、自治体、国とも関わっている。もし、株主、投資家、銀行、取引業者などに対して、その会社の経営状態について正しい情報が伝わらなければ、その人達は、大きな損害を被るかもしれないのだ。「株価にも影響します。決算書を信じる利害関係者のためにチェックが要るのです」また、公認会計士は、自治体の監査も行うのだという。「鹿児島県もいわば八千億円企業。相当な時間をかけて監査をします。」松野下さん自身も会計士協会からの依頼をうけ、三年の任期で県の外部監査人の一人になっている。「“こうしたほうが無駄を省けるのでは”と、意見も言います」現在、自治体の財政をより良くするために、大きな自治体の監査はもっと人数をかけてやるべきだとか、新たに監査専門の行政機関をつくってのぞむべきだという動きもあるそうだ。

自分で限界をつくらない

会計士のやりがいと責任

税理士は、税金に関する法律の専門家であり、会社のために合法的な範囲内で節税をめざす。一方、会計士は会社から報酬をもらいつつ、第三者の立場で会社と距離をおき、文句を言わなければならない。「微妙な関係ですよ。でも、そういう立場だからこそ、公認会計士が財務内容を監視することで、企業の社会的信用が高まることにつながります。そこにこの仕事のやり甲斐というか責任を感じます」
会計士が、会計処理の仕方の問題点を見つけて指摘することができれば、その会社がより正しくなったことになる。逆に、問題点を見落とせば、金融庁や所属する日本公認会計士協会からその会計士が責任を追求されることにもなるのだという。「会社側と見解の違いを議論する場合も、会計ルールに従って議論を尽くします。会社側には、経営状態をなるべくならばよく見せたいという誘惑がある場合もあるでしょうが、会計士は、会社側に丸め込まれない公正性をもって、ルールに従うように促します」主観や感情に流されずに、ずるいことに対して怒る義憤の気持ちや、倫理的センスがこの仕事には重要だという。「世の中に巻かれない気持ちも大切ですね。経済的・精神的独立性をもって、公正であるようにしています」

自分で限界をつくらない

最後に、これから社会に出る若い人たちにメッセージをと尋ねると、「西郷隆盛の話ですが、倫理道徳や偉人の業績を聞いて、『とても自分には無理だ』という人間に対し、西郷は『それは戦いに臨んで逃げるよりなお卑怯だ』と言った。孔子も『先生の道徳は私には無理だ』と言った人間に、『今おまえは自分を見限った』と言ったそうですよ。私は、この話が載っていた記事を切り抜いてとってあるんです。まぁ、座右の銘みたいなものですね。若い人には、自分で自分の限界をつくらないでと言いたいですね。人生をあきらめないで。努力次第で、何とでもなります」松野下さんは笑顔でエールを送ってくれた。

会計士のやりがいと責任

取材 2010年6月 No.2 しごとびと