鹿児島のしごとびと > 仕事を知る > 医療に携わる > 薬剤師

薬剤師

薬剤師

原崎 大作(はらさき だいさく)

1976年生まれ 鹿屋市出身 細山田中、鹿屋中央高、福山大学薬学部平成14年卒業。総合メディカル入社、2年勤務後、希望ヶ丘病院を経て、平成19年からアクア薬局の薬局長として勤務。現在、鹿児島県薬剤師会常務理事、鹿児島市薬剤師会常務理事を務める。プライベートでは、一線で活躍するゲストを集めたプレゼンテーション企画『TED×Sakurajima』の運営委員。アイデアを共有する場を提供している。

"高級フレンチじゃなくって、
居酒屋のような薬局があってもいいんじゃないかな"

初めて原崎さんの薬局を訪れた日。その一角に気になるスペースがあった。チラッと見るとカフェのような空間、別の角度から見ると多趣味な男子の部屋。漫画にフィギュア、レコードにプレーヤー、アートにカメラ。そんな小物たちは患者さんとの話すきっかけ、そして仕事の想像力を高めてくれるものだという。

幅が広い薬剤師

そこに想像力がなくちゃ

「サイトの書き込みなんかにも『薬剤師って粉薬を袋に詰める人でしょ。誰でもできるんじゃない』って。そんなふうに思っている人が多いですよね。そんなのなら、機械にやらせちゃえばいいんですよ。でも、状況に応じて、そして相手に対して想像力を働かせないといけない仕事なんです」食後3回3錠という聞きなれたフレーズの中にも薬剤師の仕事は多い。患者の職業や生活スタイルに合わせなければ狙った効果は得られない。「飲むのを忘れがちな人、1週間で仕事のサイクルがバラバラな人、複数の薬を飲んでいる人、みんな違いがあります。お尻から入れる座薬を座って口から飲む人もいて、今度は誤解がないようにと『お尻に入れて下さい』と言うとお汁に入れた人もいるんです(笑)」説明の伝え方でも失敗につながる。飲み間違いをしないように工夫する原崎さん。お年寄りのために薬袋のフォントはとてつもなく大きい。また、患者の何気ない動作や言葉に想像力を働かせ、体調の変化や副作用の可能性を薬の知識で推察する。薬が効き始める時間はその薬がどこで吸収されるのか、それが胃なのか口の粘膜なのかで大きく違う。薬は基本的には『毒』である。痛みに効いていた毒がその役目を終え肝臓や腎臓でどれくらいかかって無毒化されていくかを知らなければ副作用の原因ともなるという。「医者は痛みや病気の原因であるポイントをみます。薬剤師は患者さんの生活の中で治癒していくストーリーを見守ります」

幅が広い薬剤師

幅が広い薬剤師

「薬剤師は医療職の中で一番幅が広いと思うんです」薬局や病院に勤める薬剤師をはじめ、県庁の薬務課、保健所、自衛隊、そして、水道局には水道水の衛生環境などに携わる人、製薬会社や大学には基礎研究に従事する人がいる。MRといって薬品会社に所属し病院や薬局に薬の営業を行う薬剤師もいる。「MRは営業職ですが、そのおかげで情報が行き渡ってその地域が良くなるんです。薬剤師法第1条に『調剤、医薬品の供給、衛生管理の3つの面から国民の健康な生活を確保する』とあるんです。国民を守れという法律上の義務ですね。これは憲法25条の『国民は健康な生活を営む権利をもつ』につながるんです」薬剤師はいろんな仕事や商売をすることはできるが、大前提にそういう国民を守る精神がないといけないと原崎さんは語る。「もし、僕がなぜかカフェで働いていたとして、子どもに何かおやつを渡したりしてあげる時にその季節や状況に合わせて薬剤師として勉強した化学の知識をつかって衛生環境を守ってあげることができますよね」

公私混同あたりまえ

公私混同あたりまえ

仕事への向き合い方を尋ねると、「プライベートではアートを楽しむけど仕事には持ち込まない、そんな、仕事とプライベートを分けている人が多いと思うんです。私の場合、人生を楽しみたいって思っていますから、公私混同あたりまえです。だって、1日8時間も仕事で過ごして、公私混同しないでどうするのって感じです」薬局の一角には原崎さんのプライベートが詰まった空間がある。そのスペースにコロンビアのレコードプレーヤーもある。「いい音でしょ。ステレオじゃないのに」取材中にレコードをかけてもらったのは初めてだ。ビートルズの『Here comes the sun』。大好きな曲にテンションが上がる。「自分の好きなものが、患者さんと共通項を増やすツールになればと思ってここに置いてあるんです。共通項があれば話がはずむでしょ!」原崎さんの術中にはまった。

後悔するくらいの出会いをしたい

幼い頃、原崎さんは交通事故で片足を失った。医療の世界を目指したのは、そこから受けた数多くの親切へ恩返しする気持ちが大きい。「あなたにとって大切なものを並べてみてください。そしてそれを順に捨てるとしたら?結局、最後に残すのは生命ですよね。死ぬということは失うことなんです」フェイスブックは初期の頃から始めた。30代の若さで市や県の薬剤師会の理事となり、また、マスコミに積極的に働きかけ『日経DI』に薬剤師の立場で記事を寄稿している。「人とつながり、人をつなげて楽しみたいんです。そして死ぬ時には人一倍後悔したいですね。あれをしてみたかった。あの人にもう一度会いたかったって。何かを失くすということは、それだけ大きくたくさんのものを持っていた証しですよね」生きているからこそ僕たちは何かしら人の役に立ち、人に助けられ、そして新たな出会いを重ねる。ビートルズを口ずさみながら原崎さんの薬局を後にした。

後悔するぐらいの出会いをしたい

取材 2013年9月 No.12 しごとびと