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幼稚園教諭

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山形 美穂(やまがた みほ)

1980年生まれ 鹿児島市出身。
鴨池中、市来農芸高、鹿児島女子短大卒業。
小学校教諭二種、幼稚園教諭二種、司書教諭の免許を取得。平成13年より共研幼稚園に入職し現在、主任・担任として勤務。

働き始めた頃の子ども達が、
ふらっと立ち寄ってくれるんです。
長くやる意味ってこれなのかな。


待機児童という社会問題がある。働く女性が子どもを預ける保育園が足りないのだ。そこで今、幼稚園の良さと、保育園の長時間保育という特徴を併せ持つ『認定こども園』の設置が急がれている。こども園への移行に伴って、保育士の資格取得に多くの幼稚園教諭が取り組んでいる。山形さんも、そんな幼稚園教諭の一人だ。

 

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ぎりぎりまで見ないふり

「実習の時や働き始めの頃は泣いている子にいつも味方していたんです。でも、泣いている子の方が悪いことも多いと気づきました。子どもをちゃんと見ていると、どっちの子がちょっかいを出すか、けんかになる前から分かるんです。よく言われたことですが、『前だけじゃなく、横にも後ろにも目をつけなさい』と。男の子と女の子で遊び方やけんかの仕方も特徴がありますね。遊び場をめぐってよくけんかになりますが、女の子は言葉巧みに、先生を味方につけようとします。本当は男の子が最初にとっていた場所でも、女の子の口に負けて男の子は手を出しそうになったり。さすがに手をだすのは止めますけど、ぎりぎりまで見ないふりをしてけんかをさせます。言いたいことを素直にぶつけ合う。これって大人が苦手なことで、子どもに見習うところかな」。砂場でただ山をつくるにしても、水を加えると固まって大きな山にできるよ、と言ってしまえば、その子は先生に教えてもらってできたで終わる話。「どうやったら固まるんだろうねぇと、その子の気づきを待ちますね」。傍目にはただ一緒に遊んでいるようにしか見えない風景も、そこには先生たちの『待つ』という援助がある。

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幼い頃に身につけたもの

一学期はどのクラスも新しいクラスに慣れるのに必死。でも二学期は友だちの輪が広がってみんなで一緒になって何かを作り上げていく。「こんな協調性や創造性は以前私が憧れていた小学校の先生の醍醐味だとイメージしてたんです。でも幼稚園の先生として実感しています」。この仕事で好きなことといえば運動会やお遊戯会といったメインのイベント当日ではなく、イベントまでの成長の過程を目の当たりにできることと話す山形さん。自分たちは小学校、中学校、高校と、だんだん大人になるにつれ子どもの頃は忘れていく。でも、小さい頃、親や幼稚園、保育園の先生から教えてもらったことは無意識に日常生活の中で繰り返されているのだろう。『ごめんね』や『ありがとう』を言うタイミングだったり、おもちゃを独り占めしちゃいけないことも、きっと幼い頃に身につけたはずだ。

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向こう側からの景色

小学校の頃、先生とは距離を置く子だった。でも、先生に寄っていく子がうらやましかった。「先生に憧れていたタイプではなく、自分みたいな引っ込み思案の子に気づいてあげられる先生になりたいな」と思っていた。先生から見える景色はどんな風だろう。夢は小学校の先生と美容師。この2つの夢は長く続くことになる。しかし高校は父の勧めで鹿児島市外の農業高校に進学。「いやいや入った高校だったけれど、入ってみると実家を離れた寮生活、毎日の家畜の世話、白衣を着てマウスの実験。久しぶりに会う市内の友達とは全く話が合わなくなっていました。まぁ、特別な生活も悪くないなと(笑)」それでも、卒業後の進路は働きながら美容師の免許もとれる学校を探した。それが県外の学校だったこと、肌が弱かったことなどで親と揉め、「県内の短大を卒業してから、それでもやりたかったらそうしなさい」と説得された。

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悔しさで掴んだ天職

短大時代の実習は、小学校では担当教諭にほめられるほどうまくいった。送別会では、その達成感に涙しながら「私、小学校の先生になります」と宣言までした。幼稚園での実習は、悔しさで涙する。毎日の指導案作成にてこずり、毎日の反省会では反省点ばかり。子どもとの遊び方もへた、ピアノも歌もうまくいかない。良かったことは、ほぼなし。敢えて良かったところを挙げてみても『それ、できてた?』と返ってくる。「どうせ幼稚園の先生になるつもりはないし、とりあえず乗り切ろう」そう言い聞かせても悔しさはおさまらなかった。結局、幼稚園への就職活動を始める。「この仕事は、最初で全然うまくいかなかったから続けていると思います。美容師には弟がなり、自分の中で収まりがつきました(笑)。最近では、働き始めた頃の子ども達が、ふらっと立ち寄ってくれるんです。『来年受験です』とか、『先生、就職が決まったよ』とか。長くやる意味ってこれなのかな」。彼女の言葉に、ふと思った。今まで出会った先生の中に、ぼくらが成長した姿を待っていてくれる先生がいるのではないだろうか。

 

取材:2016年2月