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農業家

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井手口 正昭(いでぐち まさあき)

1972年生まれ 伊佐市出身。
山野中、出水中央高校、近畿大学九州工学部環境科学科、大学院卒業。福岡の環境管理会社勤務を経て、代用教員として帰郷。家業を手伝いながら教員の専門学校へ。家庭の事情により家業(有限会社ライス郷井手口)を継ぎ、現在に至る。

自分たちで作り、自分たちで販売する。
丹精込めた米を直接消費者へ。


ある会合で知人の知り合いということで紹介された井手口さん。美味しい米の産地として知られる伊佐市にて、その米をつくっていると聞き、早速、お話を伺いに伊佐市へ出掛けた。

 

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教師を目指していたが・・・

伊佐市でお米を作っている井手口さん。個人ではなく、父の代に法人として立ち上げた会社で生産・販売などを運営し、鹿児島市にも販売取次所としてお店を設けている。大学院を卒業後、しばらく福岡の環境管理会社に勤務していたが、鹿児島に戻り、期限付き教諭として教壇に立った。
「教師になるつもりだったんですよ。自分のお店で営業や販売の手伝いをしながら教員採用試験のために専門学校に通って本採用を目指していました」
その頃までは、弟さんが家業を継ぐことになっていたそうだが、体調を悪くして代わりに井手口さんが引き継ぐことになったという。教師になるために帰郷した井手口さん。自分の意志とは違う方向に進むことになるのだが、抵抗はなかったのだろうか。
「家族の誰かが継がなきゃならないから、しかたないですよね」と穏やかに笑う。何が起こるか分からない、だから何もしないというのではなく、何が起きてもいいように何時でも準備しておこうというタイプの人なのだろう。

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点在する圃場(ほじょう)

農地50ヘクタール、米20トン。なかなか想像しにくいが、とんでもない広さの圃場(農産物を育てる場所)が点在している。従業員の人たちと一緒に2台のコンバインを使って、稲刈りだけで9月から11月いっぱい、年によっては12月はじめまで3ヶ月はかかるという。
「土地が点在していて大変なんですよ。日当りも違えば水の状態も違います。ひとつひとつの土地に違った顔があるんです!」
前の年の状態を参考にして、米の品種を変えたり、肥料を調整したりする。味が良い、病気に強いなど、目的に合った性質の品種を交配して改良するには手間、技術そして経験が必要となる。肥料も多すぎると病気になりやすいのだという。
「自分の経験だけではダメですね。父親に相談しないと。まだ、自分は相談できる相手がいるだけでも有り難い」と話す井手口さん。ここまで広げてきた父親のスゴさを受けとめながらも、「この点在している圃場を維持しながら、できるだけ集約していくのが僕の仕事です!」と自分の目標をしっかり見定めている。丹精込めて作ったお米を買って食べてくれる人たちの顔を知っているからこそ、前向きに取り組めるのだろう。

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チャレンジを続ける

毎年12月、鹿児島市のドルフィンポートで開催されている『ファーマーズ・マーケット』。野菜・加工品を生産者自分たちで販売する、顔の見えるイベントだ。鹿児島県農業法人協会の若手によって運営されているのだが、井手口さんは初代の運営委員長として関わった。
「農業を多くの人たちに身近に感じてもらいたい。集まった若手の人たちの横のつながりが強くなることで、いいモノづくりも広がっていくと思うので。お金をかけてこのイベントの開催を応援してくれた協会の先輩方には感謝しきれないです」
そしてその思いは、しっかり次の若い人たちに引き継がれている。地に足をつけて、井手口さんの活動の幅は広がっている。農薬や化学肥料を使わない有機栽培やアイガモ農法にも挑戦中。昨年、新しい米の品種『なつほのか』で、米・食味分析鑑定コンクールの都道府県代表お米選手権部門で全国5671点の出品の中から特別優秀賞を受賞した。
「伊佐市のお米をもっともっと多くの人たちに味わってもらいたい」と意気込む。現在、そのお米の海外輸出も計画されているという。 

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取材:2016年11月