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保健師/NPO法人代表理事

財部 マチ子(たからべ まちこ)

末吉中学校、末吉高校(現曽於高校)、国立鹿児島病院附属看護学校、鹿児島大学医学部附属保健婦学校にて看護師と保健師の資格を取得(現鹿児島医療センター附属看護学校・鹿児島大学医学部保健学科)鹿児島市の保健師として38年間勤務。
その間、夜間の鹿児島大学大学院法学研究科に通い修士を取得。現在、『NPO法人あなただけの乳がんではなく』代表理事。鹿児島大学医学部保健学科特任教授。

この仕事を選んだことで自分も救われた。
これからの人生も
「人が元気になること」に関わっていきたい。


日本人女性11人のうち1人がかかるといわれる乳がん。乳がんの予防啓発や生活支援、そして患者の社会復帰に取り組むNPO法人がある。鹿児島市の相良病院の11階にできたばかりの「カドルハウス」で、代表理事を務める財部マチ子さんにお話を伺った。

 

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素直に感化され保健師の道へ

「高校時代の同級生からは、明るくなったね!元気になったね!」
と言われる財部さん。学生の頃は黙っていることの多い大人しい性格だったという。
「看護学校の寮生活で自己主張しないとやってられなかったんですよ!そして保健師とし働くことでより一層、明るく元気になっていって・・・今や職業病!(笑)」
保健師の資格を取得し鹿児島市の職員として38年間勤務した財部さん。高校生の時は、仕事について深く考えることはなく、公務員になって家計を助けたいとだけ思っていたという。
当時、進学はお金のかからない学校という理由で看護学校に進むが、そこでの出会いが財部さんの将来を決定づける。
「実習の時に指導してくれた保健師さんがほんとに情熱的で!たった4週間の研修でしたが、その人柄と保健師の幅広い活動に魅かれたことはいまだに覚えています」
素直に感化され保健師として働こうと決意したという。

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健康づくり推進を通して地域を盛り上げる

「患者さんは、生活の場にいる時と病院にいる時とでは、表情が全く違うんです」
人の生活という視点で考えると、ケガや病気の治療にあたる看護師もそれを未然に防ぐ予防医療にたずさわる保健師も社会にとって欠かせない仕事だ。
財部さんは鹿児島市の職員時代多くの仕事に関わってきた。そこで感じたのが
「病を患った人が元気になるには、その人だけの力(努力)だけでは難しい。」
ということ。
「私が30歳を過ぎた頃でしょうか。脳卒中患者の男性の家庭を訪問したことがありました。病気になったことにより仕事を失い、家族にも影響が出て奥様がパートに出なければならなくなり、孤独を抱えていらっしゃいました」
そのことがキッカケとなり、財部さんは患者と共に患者会をつくることに奔走することになる。同じ悩みを抱える人同士が集まり話せる場。現在も『つくし会』として存在しているという。その後も、健康づくり推進員や介護予防のうねりを起こす会等の健康づくりボランテイアの創設・育成を担当するなど、地域の方々と共に、健康づくりを盛り上げることに勤しむ。目の前のことに一生懸命取り組む財部さんを見て感じて、地域の多くの人たちも自分のこととして認識し協力することになったのだろう。

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先輩の死を通して学ぶ

保健師の先輩のすい臓がんの終末期のケアに関わった。
「自分の死を通して、人が死ぬということを学びなさい」
と言われたという。
「学校の先生でもあった先輩です。教え子へのベッドサイドでの最後の授業を終え、ご本人は最期まで、保健師として仕事ができたと安らかに亡くなられました」
死と直面した人と身近に時間・空間を共有し、語られた言葉を通して、多くのことを感じ学ばれたことだろう。
そのことがマスコミでも報道され、現在代表理事を務める『NPO法人あなただけの乳がんではなく』と関わるキッカケとなる。それは相良病院で活動する乳がん体験者の会『つどいいずみ』が前身で、乳がん患者、家族、医療者、サポーターが協働するNPOとして2010年に設立された。
「乳がんに向き合っているあなたのそばに立ちたい。あなたからも、私からも乳がんのことを伝え合おう。乳がんになったあなたのことは忘れない」
という思いが名前に込められているという。
今から3年前に代表理事に就任。

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自分を取り戻して欲しい

年々若年化傾向にある乳がん。まずは検診をうけるということが大切なのだという。
「スタッフには乳がん体験者が多くいます。体験者が啓発をするのは、保健師の私がするのとでは意味合いが違います。病を体験した人たちが、その体験を活かしその力を発揮できる場でもあるのです」
NPO法人は、たくさんの人たちの寄付で成り立っている。それは寄付してくださる多くの人たちががん患者の実体を理解していただき、それが協賛につながる。そのことは、社会の人たちに自分たちの存在を伝える場となるのだ。
4月から、相良病院からここカドルハウスをの運営を任されることになっているという。『カドル』には「優しく抱きしめる・寄り添う」「心と体を落ち着かせる」という意味があるという。
「『がん』と言われただけで、その精神的な落ち込みは計り知れないものがあります。予約もいらない、名前も言わなくていい。ここに来て頂き、自分に向き合い、新たな自分を取り戻すお手伝いとして、医療者を中心に、体験者のスタッフも従事します。一人で時間を過ごすのも構いません。癒しの時間と空間を提供しますので、療養生活に役立ててください」
これからも、「人が元気になることに携わりたい」と願う財部さんの活動は続く。

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取材:2019年2月