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材木輸入業&通訳案内士

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山田賢一(やまだ けんいち)

1965年生まれ。鹿児島大学附属中学校、錦江湾高校、国立台湾師範大学附属言語中心、国立台湾中興大学経済学部中退、帰国後、山田銘木店入社、平成9年同社代表取締役に就任。現在に至る。平成26年総合特区通訳案内士に登録。

コミュニケーションは言葉以前に、
自分の国や故郷のことを知っていることが大切

通訳案内士とは外国人に対し、外国語で、有料で旅行案内する仕事だ。通訳案内士の国家資格に合格し、資格を取得する必要がある。しかし現在、政府の定めた特例がある。山田さんは家業である材木輸入業で中国・台湾との貿易をするかたわら、その特例により特定区域内の通訳案内士として中国や台湾から九州を訪れる観光客をもてなしている。

通訳案内士

進学先は台湾

「高校時代は理系にいて、パソコンとか学べたらと情報系の学部を考えたり、親父が会社を経営していたせいか経済学部とかも漠然と考えていました」。実際、受験もして、合格した大学もあった。しかし、父親からの助言で日本を飛び出すことになる。「中途半端な大学に入って学位の肩書きだけをもらうより、海外の大学で言葉を覚えたほうがいい。どうせおまえは大学に行っても遊ぶだろうから、外国なら遊んだって言葉だけは覚えるだろうって。カチンときましたね。どんだけ息子を信用してないんだと。でも親父の言うとおりになりましたが(笑)」。1年間台湾の大学附属の語学センターで中国語(北京語)を集中的に学ぶ。そこでは外国人留学生の他、日本人の商社マンたちとも肩をならべた。その後、台湾の国立大学に合格。「言葉にしても勉強にしてもよくクラスメートが教えてくれました。日本への憧れが強いみたいで、こっちはバーター(交換取引)で日本語を教えてましたね」。

貿易を生業に

父親は輸入業を営んでいた。主に原材料や加工木材を台湾や中国から輸入し、国内の材木問屋や工務店、エンドユーザーへと販売する仕事だ。扱う商品は彫刻欄間という和室に使われる部材だ。「貿易の相手方は日本語が上手で、その方たちの語学力に頼っていたようですが、それでは先方のペースになってしまうし、日本語を話せる人としか仕事ができず、選択の幅が狭まってしまうのを痛感していたらしいんです。将来を見据えて、息子の私が中国語を話せたら、商売の幅や質が上がると考えていました。私自身は大学在学中、現地の証券会社から中国語も日本語も話せる人材として良い条件で誘いを受けていました」。しかし帰国の決心も父親の会社が関係していた。当時、木材の一次加工工場が台湾から中国へと移った。台湾に比べ日本語を話せる人が少なく、商習慣も気質も違う中国。『工場運営が軌道に乗るまででいいから手伝え』と日本に呼び戻された。

通訳案内士

語学力より大事なもの

仕事は現場で覚えた。外国の取引先に向かう父に同行した。検品の際、木を見る父の姿に木の良し悪しを学んだ。日本国内の営業先では顧客に学んだ。「お客さんが欲しいものを仕入れてこないと意味がないですから。高い安いではないんです」。輸入元での商取引や契約書を交わす時は山田さんの語学力が武器となった。「言葉がしゃべれることは商売の可能性を広げてくれると思います。でもコミュニケーションが上手にとれるかは別です。商品は結局、人です。それを扱っている人との縁です。たとえばサンプルは良い商品でも、その商品への思い入れや知識がある人かどうか、時間を守る人か、約束の値段・個数を満たせるか、そんな相手との縁がなければ取引をすることにはなりません」。加えてコミュニケーションには言葉以前に自分の国や故郷のことを知っていることが大切だという。そんな視点が次のステップ、通訳案内士へと山田さんを導いた。

アジアンパワー

九州を訪れる外国人は年間70万人以上。その9割はアジアからだ。新幹線が全通し鹿児島中央駅周辺ではあちこちから中国語や韓国語がきこえてくる。成長著しいアジアマーケットの観光客をさらに呼び込むため、政府は「九州アジア観光アイランド総合特区」に九州7県を指定した。九州内では、中国語・韓国語の通訳案内士の国家資格を有していなくても所定の機関が実施する研修を修了し、福岡県知事の登録を受けることで、有料の通訳案内を行えるようになった。観光客の増加に対して、通訳案内士が足りない現状が背景にある。もちろん一定の語学力は必要条件だ。山田さんは現在、旅行代理店などからの依頼をうけ、九州圏内の観光ガイドを月に数回のペースで行っている。通訳案内士の国家資格取得のための勉強も始めた。「魚の養殖場を案内したとき、魚の種類や部位までつっこまれて、ほんとうに困りました(笑)」一見、材木商と通訳案内士という接点のない仕事のようだが、山田さんは二つの仕事、二つの言葉で文化を交流させている。

取材 2014年11月