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鹿屋市副市長

ソウルフードをつくろう

福井 逸人(ふくい はやと)

「みんなで何かを出し合い、
楽しみながら何かをしよう」
という人たちをまとめるのも
副市長のしごとです。

「かのや豚ばら丼」って聞いたことありませんか?鹿屋特産の豚肉と観光名所「かのやばら園」に由来する名物料理です。これを広めるきっかけを作ったのが福井逸人さん。
昨年、農林水産省から鹿屋市の副市長に就任した福井さんに話を伺った。

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農水省官僚として

高校生のときは野球部に所属していた福井さん。坂本龍馬が大好きで、中学生の時から、「世の中を変えるんだ!」「国を動かす仕事がしたい!」という思いがあり、一浪して東京大学に進学。公務員試験に合格後、「日本中にミニ東京をつくってもしょうがない。地域を元気にする」という考えとともに、三重県伊勢市という地方出身者の自分を活かせるということで農林水産省を希望して入省したという。入省後の仕事は、主に国会での資料や予算づくり、また法律の作成など。「最初の1年間は、残業続きでなかなか家に帰してもらえなかった(笑)」それほどの忙しさに追われたという。「官僚は何のプロかと問われれば、みんなが納得するにはどうすればいいかを考えること」と話す福井さん。官僚とは、国会での与党と野党、農家の人たちと消費者など、多くの立場や意見が違う人々の間で、それぞれの言い分を整理して、論点をまとめ解決策を導き出すという仕事なのだ。官僚として仕事をしている間に、霞ヶ関の本庁を出て働く機会が2回あった。1回目は大手食品会社、2回目は栃木県庁。官僚が民間に出向するケースは初めてだったという大手食品会社では、「顧客の目線による顧客意識」「組織づくりの視点から、良い食品は良い会社からしか生まれない」ということを学び、栃木県庁では、「農産物の流通の実情」を学んだ。そんな中、農林水産省に鹿屋市から副市長を出して欲しいとの依頼が来ているのを聞き、手を挙げた。

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鹿屋市副市長として

現在、鹿屋市の副市長は2人制となっており、農林商工部や教育委員会などの担当で、任期は2年の予定とのこと。鹿屋市のことは以前から知っていたという福井さんだが、縁もゆかりもないところ。『これまでの経験を全て出し切るつもりで、農業、畜産、水産分野での街おこしをしたい!』そんな思いを抱いてやってきた。「昨年7月に赴任してまず感じたのが、畜産の街として有名なのに、そこに住む人たちが誇れる食べ物(ソウルフード)がないということです。そこで、特産の〈豚〉とかのやばら園の〈バラ〉をとって『かのや豚ばら丼』を新しい名物にしようと」。畜産農家や流通業者、飲食業者など、いろんな業界の方々へ3ヶ月間呼び掛け続けると、多くの人たちが賛同し、『豚ばら丼研究会』としての活動が開始された。副市長としての名刺には、「福『丼』逸人」と印刷されており、『丼(どんぶり)』のように鹿屋市民がひとつになって欲しいという思いが伝わってくる。赴任当初は、鹿屋市民の人たちの懐の深さに感動するとともに、一方では戸惑うことも多かったという福井さんだが、「まず、いろんなこところに顔を出して、おもしろがってやってくれる人や、業種を問わずパートナーとなってくれる人を探しました」。市の仕事は国の仕事と違い、何かやりたいと思ったら実現できる実感があると語る福井さん。

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新しい試みとしてオフサイトミーティングを開催している。「自分に関係あるのはここまでといった『縦割り』的な考えにとらわれず、他の人の意見を気軽に聞ける場をつくり、そして、それぞれが何かを出し合って、楽しみながらみんなで何かをしようという機運を生み出し、まとめるのも私の仕事です」。最後に、「しごととは何ですか?」と尋ねてみると、「自己実現の場です。人格、人づきあい、それまでの勉強、経験などすべてが試される場です」。という答えが返ってきた。益々、副市長に刺激を受けた鹿屋市の人たちから、『丼』のように魅力いっぱいの情報が発信されてくる予感を感じた。

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取材:2015年5月