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フラワーデザイナー

一生懸命の先に見えてくるもの

山本 菜里(やまもとなり)

昔も今も❝偉大な先生の面影を追いかける私❞がいるのかもしれません。

 

―――そもそも今のお仕事は、お花が好きでたまらないという想いで始めたわけではないという山本さん。いったい何がきっかけだったのか。どんな出会いがあったのか。大学から現在までのお話を伺いました。

鹿児島大学の水産学部に進学を決めたのは、そういう仕事に就きたいからという理由では全くなく。偏差値だけで進学できるところを探す中で正直そこしか行くところがなかったんです(笑)。大学卒業後も、堅実なところに進みたいという想いで就職先を選び、人事課に約5年間勤務していました。

―――何事もあまり長続きしないが、フラワーデザインだけは違った。それは、なんとなく通い始めたお花教室で出会った偉大な先生の存在があったからかもしれない。山本さんの人生を変えた、尊敬してやまない先生は今の山本さん自身をつくっている一人なのかもしれない。

もともと花は好きだったので、仕事をしながら習い事としてフラワーデザインを学んでいました。その時通い始めたお花教室の先生が鹿児島で最初にフラワーデザイン・フラワーアレンジを伝えた方だったんです!当時既に70歳前後くらいでしたが、ずっと現役の気持ちを持ち続けていらっしゃるとても美しく魅力的な方でした。私と先生が出会ったころは、すでにフラワーデザインというものがある程度浸透していて、先生にとって私は現役最後の生徒だったと思います。今では学ぶことができないような技術を教えていただいていたこともあり、今となってはそんな先生の面影を追いかける自分がいるのかもしれないなと思います。

 

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ちょうど仕事を辞めたとき、フラワーデザインの講師免許を取得するために東京に行きました。別にそのときも「花」を仕事として食べていこうだなんて考えてはいなかったのですが、せっかく習ったんだから免許まで取得してしまおうと。ただそういう気持ちでした。それからは派遣の仕事を転々としながら、不定期でお花教室を開いたりしていました。

 

―――その後リーマンショックの影響で職を失い切羽詰っているところで、ご主人から「せっかくなら仕事にしてみたら?」という提案が。山本さんは本格的にフラワーデザインを仕事とし、自宅でお花教室を始めることを決心する。徐々に生徒数が増え仕事環境も整い、今から2年前、新たに教室兼事務所としてのテナントを紫原に構えた。

 

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私のお仕事は、お花が好きという気持ち以前に人と人との関わり合い。

―――企業に勤めていたころの山本さん。自営業として再スタートを切った山本さん。働く環境が異なる中で感じることを当時の話を交えて伺った。

大学卒業後の勤め先で人事課として働いているころはとにかく楽しかったです。大学生の頃は社会のことについて考えたこともなかったので、1年目の職場は大切だなと改めて思います。人間関係についても学ぶことはたくさんありました。もう辞めてから10年近く経ちますが、当時の先輩たちとは今でも仲良しで、私の財産となっています。

自営業になってからの変化としては、あまり落ち込むことがなくなったことですね。前職のときは仕事のミスや人間関係で悩むことがたくさんありましたが、自営業となるとそもそも落ち込んでいる暇がないんです。嫌なことはお酒を飲んで忘れてしまいます(笑)。

とはいっても私の仕事はお花が好きという気持ち以前に人と人との関わりなので、トラブルはもちろん起こります。それに対してはじめの頃は万全に気を遣っていたのですがこれでは身が持たないなと。

気を遣いすぎず、自然体でお話をして、受け入れて。自分自身をあまりつくらないようにしています。そうすることで、「これが私です」という姿勢で接していくのがいいのかもしれないと考えるようになりました。

 

―――現在、紫原の本校以外に県内2校のフランチャイズ校(レッスン等を受講できる教室)を持つ山本さんに、お花業界のお話についても伺いました。

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「お花にも流行がある」ということですね。意外と意識している方は少ないんじゃないかなと思います。

私はブライダルプランナーの資格も持っているのですが、取得した理由はブライダルとお花には深い関係があるからです。ファッションの流行はブライダルに反映され、ブライダルの流行はお花・ブーケに反映されていきます。

よくフラワーデザインの資格を取得した方で、1回勉強してしまえば終わりだと考えている方もいらっしゃいますが、ファッションやお洒落、流行に敏感な人でないとただ資格を持っているだけでは意味がありません。

だからこそ「ただお花が好きだから」という理由では務まらない職業です。そういった意味でお花が好きで好きでたまらないという気持ちで始めたわけではない私にとって、仕事として割り切って働いているからこそ、この仕事を続けられているのかもしれないなと思います。

 

―――そもそも夢さえなかったという話から始まった山本さんのお話。

中学生、高校生、大学生、いつの日も自分の将来について不安を抱え悩む学生はたくさんいる。しかし、山本さんが話すようにまずは目の前のことを一生懸命取り組むことで「見えてくるモノ」「ヒトとの出会い」が必ず待っている。

さて、自分の人生はヒトとの出会いで変わるものか、はたまた走り続けるなかで変わっていくものか。誰もが今後の人生にわくわくしてしまう、そんな山本さんのお話に魅了される時間となった。

 

取材 2015年4月 ライター 飯福あすみ/写真 木村優香