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裁判所書記官

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金丸 亜由美(かねまる あゆみ)

1979年生まれ 肝属郡肝付町出身。
伊敷中学校、鶴丸高校、早稲田大学法学部卒業後、2005年鹿児島簡易裁判所に裁判所事務官として採用。裁判所職員総合研修所書記官養成課程修了後、裁判所書記官に任官。現在、鹿児島地方裁判所民事第3部に所属。

紛争の関係者が満足して、
裁判所を後にされた時にやりがいを感じますね。


この日、裁判所を知るには現場を見ることと勧められ、法廷の傍聴席に着いた。
テレビドラマでよく見る裁判のシーンが目の前にあった。法廷の正面上段に座る裁判官の下にも法服を着た人物がいる。
それが裁判所書記官。私たちには非日常の世界に映る裁判所で金丸さんは書記官として働いている。

 

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人間に興味があった

「本屋さんや学校の先生にも憧れましたし、薬剤師さんもいいなと思った時期もありました」。小、中、高と、やりたい仕事はコロコロ変わったという金丸さん。高1の文理選択では国語や社会が得意科目だったこともあり、とくに悩むことはなかった。明確に仕事を意識したのは高2のとき。「学部選択のとき、文学や歴史を研究する学部とも迷ったんですが、結局、社会と人間のかかわりが深い法学部を選択しました。人間に興味があったので。やじうま的にテレビドラマの裁判や事件に興味を惹かれたところもちょっとありました(笑)」。大学時代、時間を見つけては裁判所の傍聴席に足を運んだ。コンビニや法律事務所のアルバイトもやった。社会経験を積み始めた。

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書記官なしに法廷は開かれない

裁判には大きく分けて民事裁判と刑事裁判がある。民事裁判は、貸したお金を返してくれないなど日常生活に起こる争いを判断して、解決する。一方、刑事裁判は、犯罪に関わるもの。警察官や検察官が捜査し、検察官が被疑者を裁判所に起訴すると裁判が始まる。裁判を進めるには多くの手続があるという。裁判官の判断や判決は法律に則ってなされるが、書記官の行う手続や記録の仕方も民事訴訟法などの法律に則っていなければならない。「私たち書記官が必ず法廷に立ち会って、そのやりとりを記録します。調書といわれるものです。民事裁判を行う法廷では原告と被告の双方が主張を行う口頭弁論などの手続が行われ、刑事裁判を行う法廷では公判とよばれる手続が行われます。その調書作成は書記官の主な仕事で、権限の一つです。法廷では原告や被告が主張のやりとりをしたり、証拠調べをしたりしますが、私たちはそれを一言一句記録するのではなく、法律に定められた手続に従って、必要なものを記録として残していきます。ちゃんと法律上の手続に則って公正に裁判をやりましたと証明する必要があるんです」。調書は裁判上、行われた手続を公に証明する唯一の文書であるため、書記官は裁判の公証官といえる。「民事でも刑事でも人の権利と向き合う仕事です。裁判所へ出頭するように呼出をしたり、判決書などの重要な書類を、書記官である私の名前で送達したりするときは、その責任の重さを感じます。それがやりがいともいえますね」。訴訟手続を当事者に説明し、やるべきことを伝えたり、裁判手続がスムーズに進むよう当事者や弁護士たちと連絡をとって裁判所に足を運んでもらったりする調整役の仕事も大切だ。「『裁判所からこんな書類がきてたんですけど』と不安そうな人に、手続の意味を伝えることで、ほっとしてもらえたりするとちょっと嬉しいですね」。

視野が広いというか、
いろんな考え方を持てる人が
この仕事には向いてます。

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開かれたキャリアパス

鹿児島地方・家庭裁判所の職員は330人(平成27年4月現在)。うち裁判官が40人。その他、書記官や事務官、家庭裁判所調査官等290人が働く。裁判所では、高卒、大卒にかかわらず、また、採用試験の種類にとらわれることなく、能力や意欲に応じたキャリアパスが開かれている。学歴、性別、年齢などによって昇進やその機会が左右されることはないという。話の途中、金丸さんから「書記官としてはじめから採用される人はいません」の一言。聞くと、国家公務員特別職である、裁判所事務官として採用後、裁判所内部の書記官登用のための試験に合格し、研修を修了すれば書記官になることができるそうだ。「裁判となるとさまざまな立場の人と話をすることになります。ですので、視野が広いというか、いろんな考え方をもてる人がこの仕事には向いていますね」。裁判所の職員はプライベートでも几帳面で真面目ではという勝手な先入観に、「そんなことないですよ。夜ふかしして、なかなか朝起きられないこともあるし、忘れ物も多いんです」とクスッと笑う。

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つねに真ん中に

今までに一番印象に残った裁判は?の質問に、「んー、個人的発言はしにくいですね。でも、裁判自体は公開されているので、法廷で行われる口頭弁論や公判は原則として誰でも見ることができます」。この日、裁判所を知るには現場を見ることと勧められ、傍聴席についた。それは傷害致死事件の法廷だった。悲痛な叫びともいえる遺族の意見陳述。金丸さんは日々、このような人間の性に同席しているというのだろうか。法廷で感情移入してしまう場面はないのだろうか。「どんな場面であっても、法廷では中立公正の立場を忘れるわけにはいきません。それに、法服を着ると中立のスイッチが入ります」。感情を揺さぶる非日常の事件に金丸さんたちは強い理性でのぞむ。何色にも染まらない黒い法服をまとって。

 

取材:2015年10月